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難航するTPP交渉

 2014年2月3日、日本政府は、農業協同組合(農協)の改革や農業の規制緩和についての議論を本格的に開始しました。農協は、日本で農業を営む個人や法人によって構成されていて、農機具を共同で購入したり、農作物の共同出荷や販売を行ったりしています。このような取り組みを総合的に指導しているのが、全国農業協同組合連合会(全農)が組織する農協グループJA(Japan Agricultural Cooperatives)です。
  なぜ、農協の改革や農業の規制緩和について話し合われ、ニュースとして扱われているのでしょうか。その大きな理由としてあげられるのが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉です。
  TPPとは、貿易の自由化を目指す枠組みのことです。参加国の間で関税(輸出や輸入の際に課せられる税金)を撤廃してしまおうという取り決めを目指しています。
  現状では、国ごとに関税や品質検査などのルールが異なっているため、スムーズな輸出入ができません。日本製品が海外に輸出されても、質はよくても高い関税のために高額でなかなか売れないといったことも生じています。TPPが実現すれば、国境を越えて自由に物が行き来できるようになり、高い関税がなくなることによって日本経済も活性化すると期待されているのです。また、参加国間では、食品の安全性や医療などについてのルールも統一されることになります。このTPPの交渉には、アメリカ、カナダ、シンガポール、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、メキシコ、ペルー、チリ、そして2013年4月20日に交渉参加が正式に決定した日本の12か国が参加。同年7月23日、日本は他国より遅れてTPP交渉会合に初参加しました。
  統一ルールのもと、関税も撤廃され貿易がスムーズになる、日本の製品が海外で購入されやすくなるなどと聞くと、TPPに参加することはとても良いことのように思えます。しかし、日本国内には、これに反対している人たちも多くいるのです。
  TPP参加が懸念される原因の一つが、農業や畜産業に関する問題です。輸出入にかかる関税が撤廃されると、海外の安い作物の消費量が増えます。ただでさえ低い食料自給率が問題となっているのに、国内の農畜産業に影響が出てしまう可能性があるのです。また、食品の安全基準が緩和されることにより健康面も脅かされるかもしれないとも考えられています。

 
 

 日本は、TPP交渉に参加するにあたり、当初いわゆる「聖域」については関税を撤廃しないと言っていました。この場合の「聖域」とは、重要5項目(586品目)とその他の重要248品目を合わせた計834品目の作物のことです。詳しい品目については、「貿易交渉において相手に手の内を明かさないように」すべて公表されていませんが、ニュースでも話題になっている重要5項目には、コメ、麦、砂糖などの甘味資源作物、牛肉、豚肉、乳製品があげられています。
  これらの重要品目の関税が撤廃されてしまうと、日本の農畜産業の消費と安全性に深刻な影響を与えてしまう可能性があるというのです。ですから、日本の政府は、他のTPP参加国に対して、この「聖域」だけは関税を撤廃しないように交渉するつもりでした。
  ところが、TPPにおいては、原則としてすべての品目の関税を撤廃することになっています。このため交渉は停滞中で、特に主要作物の関税維持を求める日本と、すべての関税を撤廃したいアメリカとの間で話し合いは難航しています。

 

FTAとEPA

 日本はTPP交渉以前にも、各国と個別にFTA(自由貿易協定)EPA(経済連携協定)を結んで、貿易の自由化を進めてきました。FTAは、2国間あるいは複数国間で関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるように取り決めるものです。これに対してEPAは、物の流れだけでなく、人の移動や投資など幅広い分野で連携しようと結ばれるものです。ただし、FTAやEPAにおいては、重要な品目は関税撤廃の対象外にしてほしいという要望は受け入れられています。これに対して、TPPはすべての関税を撤廃することが原則で、例外は認められていません。他の協定よりも厳しいものとなっています。

 

日本の農業を取り巻く現状

 TPP交渉の問題に加え、日本の農業を取り巻く現状も深刻です。現在、日本の総人口は1億2722万人(2014年1月11日総務省統計局発表)ですが、このうち基幹的農業従事者(=主に農業に従事している人)数はわずか1%程度。しかも、その約1%のうち半数以上が65歳以上の高齢者です(図2)。

 
 

 農業は台風などで作物がだめになってしまったり、気温が高い日が続いて収穫前に傷んでしまったりと天候に左右されやすく、労働時間も長くつらいという印象を持たれがちです。その上、海外からの安い農作物が増えたために収入が減っているという現状もあります。この先、高齢者が農業から引退し、若い世代の後継者がいないという状況が続けば、日本の農業は衰退してしまうでしょう。
  また、農業に従事する人が減ってしまうと、耕作地が放棄されてしまいます。一度荒れた田畑を元に戻すには、たくさんの時間と労力が必要です。また、しっかりと管理され農作物が育てられている田畑には、カエルやトンボなど様々な生き物が集まってきます。さらに言えば、水田は台風やゲリラ豪雨などにおいて、雨を受け止めるダムの役割も果たしています。水田が減ると雨水の行き先がなくなり、洪水や土砂災害が増えてしまうことにもなるのです。農業の衰退が自然環境や災害にも影響するということを、ぜひ知っておいてください。

 

農産物の流通と新しい農業

 収穫された農作物は、どのようにして届けられ、私たちの食卓に並ぶのでしょうか。農家で収穫された作物は、基本、店舗に直接届けられるわけではありません。
  コメの流通について見てみましょう。コメは流通ルートによって、政府米自主流通米の2種類に分けられます。このうち政府米は、政府が生産者(農家)から直接買い入れるコメを指します。自主流通米のほうは、一般的には農家で収穫されると、ほとんどが地元のJAに出荷されます。次にコメ価格センターで入札が行われ、価格が決定します。そうしてようやく卸売業者(市場)へと渡り、スーパーなどの小売業者の店頭に並びます。野菜の場合も同じようなルートを通って、私たちの食卓へ届けられます。
  ただし、現在、コメに関しては、2004年に改正された食糧法によって農家が農協を通さずに直接小売業者に販売できるようになるなど、流通ルートは広がりを見せています。都会でも、生産者による直売所が設けられています。また、地域でとれた食材を、できるだけその地域で消費する地産地消も進んでいます。これらの取り組みは、生産者と消費者の関係をより近づける役割も担っていると言えます。地産地消に関しては、フードマイレージ(食料輸入量×輸送距離)を小さくして、輸送時に排出される二酸化炭素を削減することにもつながっています。
  さらに、最近では、LED照明で植物栽培を行う工場が出てきたり、農業分野のIT化が進められたりと、技術面での改革も進んでいるようです。企業が農業に進出するようにもなり、若者が社員として就職するパターンも出てきました。農家の高齢化や耕作地の放棄などの問題を解消するアイディアとして、注目が集まっています。

 

LED照明で植物栽培

 LED照明(発光ダイオードを使用した照明)による植物栽培は、何度もニュースで取り上げられています。LED照明を太陽光の代わりとして用いたり、日照時間が足りない時に人工の光でそれを補ったりして野菜などを安定的に供給する方法で、植物が光合成に必要な光をつくり出すことが可能なのだそうです。完全に室内で育てる工場の場合は、雨風の影響を受ける心配もありません。場所を問わずに栽培できることも特徴で、近い将来、レストランで提供される野菜は、すべてそのレストランで栽培されたものになる日も来るかもしれませんね!

 

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