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深刻な算数・数学離れが心配「楽しい!」を継続する難しさ

 気が付いた時には算数が大好きだった。それが私の子ども時代です。両親とも理系だったということもあり、算数の問題が解けるたびに「すごいね!」と言って褒めてくれました。それが嬉しくて、新しい問題に挑戦しました。そうして繰り返しているうちに、自然と算数が好きになっていったのかもしれません。
  小学校に入学したての頃、誰もが算数の時間が楽しかったと思うのです。算数のお道具箱ってありませんでしたか? 箱の中には、時計やカラフルなおはじき、かぞえ棒、つみきなどが入っていて、開けるだけでワクワクしたものです。それらを使って視角的に感覚的に学んでいた時期は、多くの人が算数を楽しんでいたのではないでしょうか。難しいのは、その時の「楽しい!」をいかに継続させるかです。計算が遅い、図計問題ができないなど、算数・数学に苦手意識を持つきっかけは人それぞれですが、一度苦手だと思ってしまうと、そこから立ち直ることがなかなかできません。
  今、算数・数学を敬遠する子どもたちの状況は深刻です。社会でどう役に立つのかわからないまま学校の授業に臨むこともあり、苦手意識を克服できないまま大人になってしまいます。このような状況が続けば、将来、日本の優れた科学技術や様々な分野の研究に、必ず影響が出てくるはずです。子どもたちが算数・数学を苦手になるきっかけを、どれだけなくしてあげられるか。そこが課題だと私は考えています。

 

日本の伝統的な遊びの一つ折紙を通して幾何学に興味を

 幾何学が苦手だという人も多いですね。実際、工学系の学部に所属する大学生が立方体を描けないということも起こっているのですよ。日常生活においても、インターネットやゲームなどの平面的なものが中心で、立体的な感覚を養う機会がほとんどありません。
  そこで、私は、日本の伝統的な遊びの一つである折紙を、教育に活かせないかと考えました。折紙を通して、図形や3次元構造物の美しさ、面白さに気づき、最先端科学技術やデザインの分野などに応用されている幾何学へ興味を持ってもらえたらと考え活動しています。
  皆さんは「ミウラ折り」という言葉を聞いたことがありますか? これは航空宇宙工学者の三浦公亮先生(現・東京大学名誉教授)が1970年に発明した折り方です。折紙の基礎の技術である山折りと谷折りだけでできてしまう上に、紙の対角線の両端を軽く押したり引っぱったりするだけで展開や収納が可能です。人工衛星のパネルに応用するために考え出されたミウラ折りですが、折りたたみ式の地図やパンフレットなどに利用されています。
  ミウラ折りは日本人による発明ですが、折紙の技術を利用しようという動きは海外のほうが盛んです。「ハニカムコア」は、六角柱を蜂の巣のように隙間なく並べた構造体で、軽量でありながら強度や衝撃吸収性が高いことが特徴です。世界中に広まり、飛行機の翼や自動車の床材などに使用されています。ハニカムコアを思いついたのはイギリスの技術者なのですが、そのきっかけは日本で七夕飾り「でんぐり」を見たことだったそうです。また、NASAの宇宙ヨットに使われているソーラーセイル(太陽帆)の折りたたみ技術も、折紙の発想と共通しています。
  日本は折紙を遊びととらえてきたために、その技術を先端技術に応用するスピードが、残念ながら海外よりもだいぶ遅れています。私たちは、今後、この優れた伝統技術である折紙を、先端技術に脱皮させる必要があります。折紙は遊びだけでなく、社会に役立てることができる技術なのです。

 

折る、計算する、形を想像する折紙は様々な感性を磨きます

 折紙は視覚や触覚を刺激してくれます。完成図をイメージしながら折っていったり、知っている折り方を組み合わせて違う形を作ったりすれば、想像力や創造力も鍛えられます。図形や空間を把握する力も養われます。ただ折りたたむだけなのですが、教育教材として様々な感性を磨くことができる可能性を秘めているのが折紙なのです。

 

 

 私たち研究者は、数理的に解析した工学用の折紙モデルや、動植物の形態を模擬した折紙モデルを数多く開発してきました。折りたたまれた虫の羽の構造や、ひまわりの種の配列、朝顔の蕾の構造などを数理的に解析して数式化し、その数式を用いて展開図を描き、折紙で再現しています。
  折紙講習会では、こうした展開図の中から、比較的簡単に折れて、子どもたちが興味を示すような美しい、面白い造形を選んで紹介しています。また、高校生くらいになれば、ただ折るだけでなく、なぜそのような形になるのか考えさせることもしています。この後7ページで取り上げますが、同じ円筒を折りたたむ展開図でも、折り線を斜めにするかしないかだけで完成形が異なります。谷折り線が斜めの場合は力線が上端で解放されるので、谷折り線が水平の場合より上に伸びるのですが、こうした違いを示してあげて理由を考えてみると、数学の世界の面白さを発見するきっかけになるでしょう。

 

杉山先生の研究室には、様々な構造の折紙作品がありました。

 

快感をともなう成功体験が学ぶ意欲につながります

 算数・数学に限らず、子どもの学ぶ意欲を引き出すカギは成功体験にあります。わからないことを自分で調べて解決できた、問題を自力で解いた時の快感が必要ではないでしょうか。その時、大人が褒めてあげるともっといいですね。
  折紙は、まず自分で作る楽しみがあります。山折りと谷折りだけの単純作業でありながら、折りたたんだ後の完成図を想像しながら工夫して折っていく必要があり、忍耐も必要です。だからこそ、仕上がった時には達成感が得られます。また、数理的な解析がされている折紙モデルなら、角度を変えたらどうかなどの工夫を加えることで様々な展開も可能です。私も、近い将来、教育用折紙モデルが教育現場で広く活用されるように力を注いでいきたいと思います。

 

折紙の種類いろいろ

 折紙の起源は明確にはわかっていません。平安時代の書物『清輔朝臣集』(作者の藤原清輔は百人一首の歌人としても知られています)において、「青きすじある紙にてかへる(カエル)のかたを作りて書きつけてやりける」と書かれています。この頃には、すでに遊戯としての折紙が成立していたようです。
  折紙には、いくつか種類があります。私たちにとって最も身近なものは、正方形の紙一枚を使って折る「不切正方形一枚折り」です。いくつかのパーツに分けて折り、それらを組み合わせて作る「複合折紙」もよく知られています。「奴さん」や「袴」などは皆さんも作ったことがあるのではないでしょうか。他にも、紙に切り込みを入れて折る「切り込み折紙」(「連鶴」など)や、同じ形に折った紙を複数組み合わせて作る「ユニット折紙」(「くすだま」や「箱」など)といった種類もあります。
  以降で紹介している折紙も、正方形に捕らわれない自由な作品です。折紙の奥深さを実感しながら、作品作りに挑戦してみましょう!

 

 

 

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