大学の学長先生の勉強時代のインタビューを掲載。

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わたしの勉学時代

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1899(明治 32 )年の京都蚕業講習所開設より、116年の歴史を有する国立大学法人京都工芸繊維大学。伝統文化が息づく古都・京都にある同大学では、豊かな知識と感性を育み、学問、芸術、文化、産業の各分野で活躍する優秀な人材を輩出し続けてきました。今回は、京都の下町出身であり、2012年4月より京都工芸繊維大学長に就任されました古山正雄先生にお話を伺いました。

京都の伝統文化に触れて育つ

私が生まれ育ったのは、京都市の中にあって商人や職人が多く住む下町です。伝統的な京町家が軒を連つらね、祇園祭の7月には都大路を巡行する山鉾が建ちます。
父は*1京友禅の図案を描く職人でした。家で仕事をしていましたので、朝から夜中まで筆を動かす父の姿を見て育ちました。
父の仕事の関係で、伝統的な模様や季節に合わせた模様などをたくさん見てきました。毎年春と秋には、京友禅の展示会が開催されます。京都市内にある寺院や歴史的建築物などが順番に会場となるのですが、その会に何度か連れて行ってもらいました。また、父には茶道の趣味もあり、時々は茶を点てていました。こうした環境にいたので、私自身も京都の歴史や文化に親しんできたのだと思います。

  *1 京友禅…京都の伝統工芸品の一つ。江戸時代の人気絵師・宮崎友禅斎の絵を用いて生み出された染色で、
     複雑な模様を染め出す技は世界的に知られている。

 

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美しいもの、きれいなものを表現する京友禅の仕事をしていた父は、伝統文化に深い関心を寄せていました。

才能がなくても、苦手でも努力は決して無駄にならない

 私たちの時代、子どもは「小さな大人」として認識されていたと思います。一日中、子どもたちだけの世界で遊んでいるのではなく、家業を手伝うなど社会の一員としての責任がありました。小学生の頃は、暇ができれば友人たちと一緒にソフトボールの練習をしたり、試合をしたりして遊んでいたのを覚えています。
中学校に入学後は陸上部に所属しました。町中の学校だったため校庭があまり広くなく、練習スペースが確保できませんでした。そこで、少し離れた練習場まで部員全員で走って行き、練習後にまた走って学校に戻って来るという毎日を送っていました。熱心な部活で、東山や御室などの京都の山のふもとまで行き、土曜日も日曜日も練習したものです。
こうした努力が実り、3年生の時には京都市の大会で第3位になれました。ただ、それ以上は伸びませんでしたね。
どんなに頑張っても第1位にはなれなかった。私には才能がなかったのだと思います。いくら努力を重ねても限界があると痛感しましたが、同時に努力は決して無駄にはならないことも知りました。陸上部での経験は大きな糧になったと思います。
勉強面では国語が得意でしたが、テストを受ける時はいつも不安でした。国語の問題の中には、登場人物の心情や作者の意図を問うなど「これが正しい解答だ」と断言できないものがありますね。確信が持てないというのは大変心細いものです。国語は満点を取りづらい科目でもありました。
 一方、数学は苦手でしたが成績は安定していました。そして、苦手であるがゆえに、 大人になってもある種のトラウマを抱え続けました。解けない問題にとことん向き合い、納得するまで挑みました。それを40代、50代になっても続けました。数学者を志したわけではなかったので、若いうちに何か結果を出そうと意気込んでいたわけではありません。今思い返せば、苦手なことに耐えて挑み続けられたのは、「知りたい」「解わかりたい」という気持ちが原動力だったと思います。「苦手だ」「難しい」と思うことでも、 挑み続ければ理解できるようになるはずです。すぐに投げ出さずに、長い目で見て付き合っていくとよいのではないでしょうか。

京都大学で建築を学ぶために親が納得する学力を身につける

私は長男でしたので、父や母からは「将来は家を継ぐのが当然」と思われていました。それがプレッシャーでした。職人になる以外の道について考え始めたのは、小学校高学年頃からです。京友禅の仕事、美しいもの、きれいなものに触れる職業は好きでしたが、私自身がこれで食べていけるかと考えた時、どうしても自信が持てませんでした。そこで、美術と理数系の学問を合わせた建築の分野に進もうと決めました。親の願いとは違う進路を目指すわけですから、説得するための材料が必要です。勉強を頑張って、京都府の模擬テストを受けて第10位以内に入るような実力が身につけば、京都大学に進学することも可能で、
親も京都大学でなら建築を学ばせてくれるだろうと考えました。そして、その説得は実を結び、父も母も建築学を志すことを許してくれました。こういうふうに話をしますと、他の子どもよりもずいぶんと大人びていて、現実的だと思われるかもしれません。ですが、子どもは大人が思っている以上に自分の将来について真剣に考えていて、様々なプレッシャーに耐えながら日々を過ごしているはずです。最近の子どもは特にしっかりしているのではないでしょうか。
 高校は京都市立堀川高等学校に進学しました。中学卒業と同時に、陸上競技からは離れました。スポーツを趣味として続けられればよかったのですが、特に陸上は真剣に取り組んできただけに、どうしても中途半端には関われなかったのです。そうした環境も手伝って、ますます受験勉強に集中できました。

 

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受験勉強のスタイルは夜型でした。朝型にしておけばよかったと少し後悔しています(笑)

京都を出て、東京大学大学院へ

 京都大学では、同級生たちから大いに刺激を受けました。才能のある人物が周りにたくさんいて、議論を交わすことが楽しかったですね。入学後、すぐに*2大学紛争に突入して構内が封鎖されてしまいましたので、一時期授業どころではなくなったの
は残念でした。 
専門領域の学びとなると、ある種の職業訓練的な印象もありました。日本建築史や西洋建築史の授業は大変マニアックで、言葉だけを並べられてもさっぱりイメージできませんでした。こうした知識は、後になって実際に歴史的建築物を見たり、他の研究に応用しようとしたりした時に役立ちます。もちろん古い建物の知識だけではだめですので、夏休みなどは東京まで出て行って様々な現代建築を見て回りました。九州地方をはじめとした各地の建物も訪れ、写真を撮ったり、スケッチをしたりしました。
大学3、4年生頃、都市計画を専攻したいと思うようになりました。同時に「このまま京都文化にどっぷりつかっていて大丈夫だろうか?」という不安も抱くようになりました。京都の伝統文化は素晴らしいと思いますが、「一度は違う環境に身を置いて、もっと広い視野を持つべきだ」と考えるようになったのです。そして、東京大学大学院に進学しました。
大学院時代は、朝から夜遅くまで先輩研究者の指導を受けながら、ひたすら研究に没頭しました。私が専門としたのは、数理的な手法を使って都市計画をする研究です。簡単な関数を用い、複雑な都市事情を表現することを試みます。膨大なデータを簡潔に表すことができれば、例えば日本の県庁所在地をすべて結ぶネットワーク(新幹線や高速道路)を造る時、最も効率のよい方 法(コスト面等)を、地図を広げずに計算するだけで答えることができます。ただし、そこには政治的あるいは経済的な事情もからんできますので、一筋縄ではいきません。複雑で奥が深い学問であると思います。

  *2 大学紛争…大学と学生が対立状態になること。 大学闘争ともいう。特に1960年代末期は高校や予備校まで闘争状態になった。
     これらを総称して学園紛争とも呼ぶ。

偏った経験=専門ではない 音楽やスポーツにも挑戦しよう

 皆さんには、勉学だけでなく様々な分野に挑戦していただきたいと思います。偏った経験は専門的とは言えません。知識人と呼ばれる方々は、驚くほどたくさんの技能を身につけています。大学院時代、イギリスのケンブリッジ大学に留学した時、周りにいた優秀な人物たちは、自分の専門の他に楽器が演奏できたり、スポーツが得意だったりしました。特に、音楽やスポーツは、言葉の壁を越えて楽しめるものです。楽器でセッションをしたり、一緒に体を動
かしたりできれば、誰とでもすぐに仲良くなれます。そうしたコミュニケーションに役立つ教養は、本格的な受験勉強に入る前、小中学生時代に身につけておいたほうがいいでしょう。
また、皆さんには素直であってほしいと思います。人生には挫折がつきものです。 自分より優秀な人は必ずいます。思い通りにならないこともあるでしょう。そこで屈折した考えに陥るのではなく、素直になって周りの意見に耳を傾け、「自分は自分だ」と前向きにとらえることが大切です。挫折を人生の糧として、次のステップへと進んでいただきたいと思います。

KITスタンダード

 京都工芸繊維大学は、科学・工学・芸術を総合する全国唯一の「工芸科学部」を有しています。そんな同大学では、2009年度より「KIT(KYOTO INSTITUTE OF TECHNOLOGY)スタンダード」という教育プログラムをスタートしています。技術者として巣立っていく学生たちが、社会において様々なニーズに応えられるよう、専門外の幅広い知識を学ぶためのプログラムです。5つのリテラシー「遺伝子」「環境科学」「ものづくり」「造形感覚」「知的財産」に加え、「英語」「数学」の基礎科目について学びます。また、その習熟度を学外に示すための「KITスタンダード検定」も年に一度実施されていて、学生は希望すれば何度でも受検できます。受検する学生に向け、附属図書館には「KITスタンダードコーナー」が設置され5つのリテラシーの関連書籍が置かれています。

 

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KTI検定の様子。どの学生が解答済みか、前のスクリーンでわかるようになっています。

過去問題に挑戦して自己採点もできる「自学自習Webシステム」もあり、自学自習環境が整っているのも特長。多様な現代社会に必要とされる、積極的に課題に立ち向かえる技術者を育てる取り組みです。
KTI検定の様子。どの学生が解答済みか、前のスクリーンでわかるようになっています。

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