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わたしの勉学時代

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東京女子師範学校を起源に持ち、2015年に設立140周年を迎えた国立大学法人お茶の水女子大学。少人数制による高度な専門教育を特色とし、優れた人材を数多く輩出している大学です。また、文系・理系にまたがるテーマを学ぶ「21世紀型文理融合リベラルアーツ」、国際社会で活躍できる女性を育てるグローバル教育などの取り組みも充実しています。今回は、2015年4月に同大学の学長に就任された室伏きみ子先生にお話を伺いました!

何でも挑戦させてくれた我が子を尊重してくれる両親

子どもの頃に私たち一家が住んでいたのは埼玉県浦和市(現さいたま市)です。会社員だった父は、電車で1時間ほどの東京都内まで通勤していました。毎日忙しくしていて疲れていたはずですが、子どもたちとの時間を大切にしてくれる、とても優しい人でした。土曜日には、よく三越に連れて行ってもらったのを覚えています。仕事帰りの父と待ち合わせて、デパートで買い物や食事を楽しみました。
その後は、浅草の松屋デパートまで足を延ばし、子ども用の電気自動車に乗せてもらうのが定番のコースでしたね。私は電気自動車やゴーカートを運転するのが大好きな、おてんばな子でした。
母は多趣味で、日本舞踊、琴、華道、茶道などをしていました。そんな父母ですから、子どもが興味を示したことにはとても寛容だったと思います。私が「やりたい」と言ったことは何でも挑戦させてくれました。母に影響を受け、幼い頃から日本舞踊や琴などのお稽古を始めました。
小学1年生から高校3年生まではクラシックバレエを習い、画家の先生について絵も描きました。興味のあることに打ち込む時間は、とても楽しかったのを覚えています。
我が子の興味や考えを尊重し、どんなことにも挑戦させてくれる。子どもたちに惜しみなく愛情を注いでくれる。それが私の父と母でした。今の私があるのは両親のおかげです。

 

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両親ともに愛情深く、分け隔てのない人でした。母は子ども好きで、私の友達を快く迎え入れていましたので、我が家はいつも友達の笑い声で溢れていました。

好奇心旺盛な小学校時代に命、科学への興味が芽生える

私には9歳下の弟がいます。この歳の離れた弟がかわいくて仕方がなくて、周りから注意を受けてしまうほど、それはもう甘やかしていました(笑)。赤ちゃんは本当にすばらしいですね。生まれたばかりの小さな手や爪は、すでに私たちと同じ形をしています。泣いたり笑ったり、当然ですが物を食べたりもします。
それらを眺めていると、生命の神秘を感じずにはいられませんでした。日々成長する様子にも感動したのを覚えています。命に対しての興味は、弟との関わりの中で芽生えたものでした。
小学生の時、とりわけ好きだった教科は理科です。私が通っていた小学校には理科の専科教員がいました。当時としては珍しかったはずです。その先生が実践されていたのが、児童が自ら考える授業でした。先生が出す課題に答えられたら、あとは自由時間。私たちは早く外へ遊びに出たいので、真剣に考えて解決方法を導こうとします。
少しでも早く正解にたどり着けると嬉しかったですし、考えること自体も楽しかったです。問題の正しい解決方法は、次の授業で実験をして確かめました。実際に結果を目にするので、心の底から納得できました。また、夏休みには、先生のご実家がある秩父市へ連れて行っていただいたことも覚えています。皆で植物採集をしたり、岩石や化石を集めたり、地層を観察したりと様々な体験をしました。
この時の経験が、後の理学部進学の原点になりました。当時の同級生のうち複数の人が、私と同じく研究職に就いています。彼らにとっても、先生から受けた影響は大きかったと思います。

「理科の先生になりたい!」

お茶の水女子大学附属中学校を受験しようと思ったのは、憧れの女性に近づきたかったからです。その方は遠い親戚にあたるのですが、東京女子高等師範学校(後のお茶の水女子大学)を卒業されていて、いつも姿勢正しく凜とした印象でした。「あの人のようになりたい」と思っていたところ、ちょうど小学校の担任の先生から附属中学校の受験を勧められたのです。
小学6年生の12月、初めて全国模試に挑戦しました。毎週日曜日に実施されていた試験です。一度目は大勢の人たちと一つの会場で受ける試験の雰囲気に慣れず、思ったような結果が出せませんでした。「なぜこんなに成績が悪いのだろう」と思ったのを覚えています。ところが、次に受けると、前回よりもいい点数が取れたのです。以降、数回の模試を受けましたが、受けるたびに成績が上がっていくので、だんだんと面白くなっていきました。全国8位という結果が出た時は、嬉しかったですね。

中学校では自然科学部に所属しました。部員たちは、好きなテーマで思い思いに実験や観察をしていました。顧問の先生が寛容な方で、少し危険を伴う実験内容でも許可してくださったので、とても有り難かったですね。
私が行った実験で今でも覚えているのは、運動する前後での唾液中のpH(水溶液の酸性・アルカリ性の程度を表す単位)の変化の調査です。運動部全員にpH試験紙を舐めてもらって、その結果を発表会で披露しました。
また、中学校では理科の担当が女性の先生ばかりでした。当時は理系分野で活躍する女性が珍しかったのですが、私たちはそれが当たり前と思って過ごしました。高校でも女性の先生に教えていただいたので、「理科の先生になりたい!」という思いを強くしました。お茶の水女子大学への入学はかねてからの目標でしたが、理学部進学については迷ったこともあります。そんな私の背中を押してくれたのは、弟が生まれて芽生えた生命への興味、自ら考える面白さを教えてくれた小学校の理科の授業、中学校と高校で出会った理科の先生、これまで経験した様々なことでした。
 

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中高校生時代は、理科の先生の他に、国語の先生や画家にも憧れました。

研究者として、母として

教員から研究者へと進む道を変えたのは、大学4年生の時です。学生たちはそれぞれ研究室に所属し、与えられたテーマに取り組みます。その中で新しい発見をすると「この発見は、今、ひょっとすると世界で私だけが知っていることではないか」と考えるわけです。これほどわくわくすることはありません。次第に研究を続けたいと思うようになり、大学院への進学を決意するに至りました。
博士号を取得したのが1976年です。その後しばらくして、学生結婚をしていた夫がニューヨークへ渡ることになりました。私も研究員の職を紹介していただき、生まれたばかりの息子を連れて渡米しました。
ニューヨークで私が所属した研究室のボスは、女性のラトナー先生でした。非常に優秀で、ノーベル賞の受賞者候補にあがってもおかしくないすばらしい発見をされた方です。彼女は当時70歳という高齢でしたが、研究費を確保して精力的に取り組んでいました。
また、彼女自身がロシア系ユダヤ人で、かつて家族でアメリカに渡って来た過去があり、亡命科学者たちを支援する活動も行っていました。私は、研究においても、その人間性においても彼女から大変良い影響を受けたと思います。

渡米前は不安に思うこともありましたが、研究者として、母として楽しく海外生活を送ることができました。様々な国から来た、文化も考え方も違う人々との交流は、私の視野を広げてくれたと確信しています。若いうちに多様な価値観に触れることは、本当に大切なことだと実感しました。子育てについては「楽しかった」の一言に尽きます。弟の時もそうでしたが、息子の日々の成長は感動の連続でした。
それらの思い出をたくさんのメモに残していて、後に*児童文学作品「プッチーシリーズ」としてまとめることができました。
*室伏先生が書かれた児童文学作品「プッチーシリーズ」は25ページで紹介しています!

子どもの可能性を広げる

今の私があるのは、子どもを尊重してくれる両親のもとで、好奇心の赴くまま様々なことに挑戦できたからです。また、出会えた恩師の方々や友人たちと信頼関係を築けたことも、私の進路に良い影響を与えました。
皆さんも、やりたいと思ったことは、諦めずに取り組んでいただきたいと願います。失敗する可能性や苦手意識を恐れずに挑戦してください。前向きに取り組んだことは、たとえ結果が出なかったとしても、きっと将来の糧になることでしょう。
また、保護者の皆様や先生方は、子どもたちの可能性をできるだけ広げてあげてください。「あなたには無理だ。向いていない」などと頭ごなしに否定しないでいただきたいのです。大人から「だめだ」と言われると、子どもたちは委縮して何もできなくなってしまいます。
子どもたちと、たくさん話をしてください。どんなことに興味があるのか、何を考えているのかを知り、信頼関係を築くこ とができたなら、子どもたちの選択肢は自ずと増えていくことでしょう。

 

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ニューヨークで研究員をされていた当時の室伏先生。2年半の間、子育てと研究を両立されました。

グローバル教育に注力

お茶の水女子大学では、特にグロー バル教育に力を入れています。大学間交流の協定大学は、2016年4月時点で世界24か国69大学。学内外のサポートにより、学生たちが留学に挑戦しやすい環境も整えています。1~2か月の海外短期語学研修も盛んで、現地での生活の他、インターンシップなどの体験を通して広い視野を養ないます。
海外から日本へも300名弱の留学生を受け入れ、キャンパス内で様々な文化や言語に触れる機会を持つことができるのも特長です。また、毎年夏には「サマープログラム」を実施。この集中講義期間中には、英語によるディスカッションや留学生との交流会などがあり、学生たちは多様な価値観を知るきっかけを持つことができます。

 

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「サマープログラム」の他にも、英語力を強化する「ATCプログラム」、語学学習のサポートなど、 充実した取り組みが特長です。

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