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わたしの勉学時代

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「異文化との交流」「異分野との交流」を重視する国立大学法人神戸大学は、国際性豊かで、分野の枠にとらわれない教育環境が特徴です。また、2016年度より、これまでの前期・後期の授業期間を
それぞれ半分に分ける「クォーター制」、全学年にわたって教養科目を学ぶ「神戸スタンダード」という新たな取り組みもスタートしています。今回は、同大学の学長である武田廣先生にお話を伺いました!

段々畑から眺める故郷の風景

故郷の風景を、私はいつでも思い浮かべることができます。私は愛媛県の西部、八幡浜市で生まれ育ちました。伊予灘や宇和海を望み、漁業や海上交通の要所として栄えた土地です。また、丘陵地も多く、昔から温暖な気候を利用した温州みかんの栽培が盛んでした。私たちは「てんぷら」と呼んでいましたが、愛媛の特産品じゃこ天(地魚をすり身にして形を整え、油で揚げた郷土料理)も美味しいですよ。
実家は兼業農家でした。父は平日には会社員として働き、段々畑の世話をするのは主に祖母や母の役目でした。私も毎日のように畑へ行き、家族を手伝ったものです。傾斜地につくられた段々畑を往復していましたので、自然と足腰が鍛えられました。畑から見下ろした景色は、今も変わらずとても美しいのですよ。天気の良い日には、佐田岬の先に広がる豊後水道、そして九州は大分県まで見渡せました。

 

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畑を手伝って足腰が鍛えられたおかげで、小学校ではかけっこが大の得意でした。

学びに夢中になる経験きっかけは算数の問題集

小さい頃の私が懐いていたのは祖母です。祖母は4人兄弟の長男であった私を、大切に、しかし厳しく育ててくれました。そろばん教室を無断で休んだ時、定規で叩かれながら叱られたことを覚えています(笑)。祖母は忙しかった両親に代わり、しっかりと私の躾をしてくれました。
算数が得意になったのは小学6年の時です。物足りないような顔を授業中にしていたのでしょう、担任の先生から「これをやってみなさい」と算数の問題集をいただきました。大変厚みのある問題集で、解き終えるまでに2か月ほどかかったと思います。その後、中学校に入学して、数学の学習内容を問題集ですでに学び終えていることに気づいた時は、大変驚きましたね。問題集をやり遂げたことで、初めて“夢中で学ぶ”経験ができました。
この担任の先生には、時々ご自宅に招いていただきました。我が家にはなかった文学全集などを好きなだけ借りていたのを覚えています。先生には大変感謝しています。
中学校は、小学校と同じく地元の公立校に通いました。この頃、熱心に取り組んだのは天体観測です。学校が眺めのいい高台に建っていたので、天文部が活動する場所にはぴったりでした。毎日のように星空を見上げながら、部員同士で語り合ったものです。初めて見つけた星に気持ちがたかぶり「もしかすると新発見かもしれないぞ!」と声を上げたりもしましたね(笑)。都会ではまず見ることができない満天の星の下で、いろいろと思いを巡らせる時間が大好きでした。
たくさんの友人たちと過ごした時間は、とても楽しかったですね。

悩んだ末に理系学部を志望

高校は、当時の同級生のほとんどがそうであったように、地元の愛媛県立八幡浜高等学校に進学しました。大学には進学したいと思っていましたので、商業科ではなく普通科を選びました。
進学後は陸上競技部に所属し、中距離走を専門にしました。2年生の半ばに引退するまで、県大会に出場するなど熱心に取り組んでいました。一度、県大会で駅伝に出場したことがあります。メンバーの一人が出られなくなり急きょ呼ばれたのですが、そこで優勝したのです。残念ながら、全国大会にはもとのメンバーが出場したのですが、優勝した後、ちゃんぽんを顧問にごちそうしていただいたことはいい思い出です。
ちゃんぽんは初体験でした。「こんなに美味しい料理があるのか!」と感動したのを覚えています。
高校時代は古文・漢文が好きでしたね。『徒然草』は二四四段すべて読み終えました。パズルを解くように、文章のパターンを理解しながら、読めない部分を明らかにしていく作業は面白かったです。文系も理系もどちらにも興味がありましたので、進路についてはとても悩みました。悩んだ末に「宇宙工学を学びたいから理系学部へ進もう」と考えるようになりました。
そして、東京大学の受験を決めました。進路を定めるのに役立ったのは模擬試験です。地方の公立校に通っているだけでは、東京の大学についてはほとんど情報が入ってきませんでしたので、模試の分析結果は大変参考になりました。県外へ出ることに対して、両親からは反対を受けませんでした。ただ、祖母からは「何が悲しくて、遠い東京の大学へ行かなければならないのだ」と言われました。
寂しい思いをさせてしまったようです。

 

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中学時代はコーラス部や陸上競技部など、クラブ活動に力を注そそぎました。また、生徒会長としての活動にも取り組みました。

世界屈指の研究環境で得た人脈

大学時代はとにかくお金がなくて、常に空腹でした。当時は月1000円だった国立大学の安い学費と、地方から出て来た学生の世話をする愛媛県人寮がなければ、到底暮らしていけなかったと思います。書籍の購入費もアルバイト代からやりくりしていました。入学後すぐから約1年間は*1大学紛争で授業どころではありませんでしたので、本を読み、様々な人と出会い、見聞を広める時間に費やしました。この頃読んだ本の中で特に印象深いのは、フランツ・カフカの中編小説『変身』です。作品の内容に新鮮なショックを受け、
それからはドイツ文学を読み漁りました。 
大学紛争が終結し、授業が再開する頃には、専門分野を決めなければならない時期になっていました。高校時代は宇宙工学に興味がありましたが、最終的に選んだのは物理学です。学部時代は理学部で学び、大学院時代は奨学金を得ながら、なんとか研究を続けることができました。
素粒子や原子核などが私の専門分野です。研究者時代、研究室には東大以外からも多くの専門家が研究室に集まっていました。世界屈指の研究環境で得た人脈は、私の宝物です。特に印象深かったのは、他でもなく研究室のボスだった*2小柴昌俊先生の存在です。小柴先生には、ドイツ留学や、理学部附属素粒子物理学国際協力施設(現・理学部附属素粒子物理国際センター)の助手の職を紹介していただくなど、大変お世話になりました。

*1大学紛争…大学と学生が対立状態になること。大学闘争ともいう。特に1960年代末期は高校や予備校まで闘争状態になった。これらを総称して学園紛争とも呼ぶ。
*2小柴昌俊…物理学者、天文学者。設計を指導・監督したカミオカンデが史上初めて自然発生したニュートリノの観測に成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した。

 

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1979年ドイツ・ハンブルクにて。
向かって左が武田先生、中央が小柴昌俊先生、右がニュートリノ振動を確認した物理学者の故・戸塚洋二先生。

基礎の勉強をがんばりましょう

私の研究は、物事の根源について考えることです。物質を構成する最小の単位である素粒子が、どのような性質を持っているか、大きさや質量はどれほどかを研究します。小さな、本当に小さな世界ですが、私たちの住む地球、そして宇宙全体に欠かせない存在であることはまちがいありません。物事の根源を追究し、宇宙全体へ思いを馳せるという意味では、哲学の領域とも重なります。面白いものです。世界中が注力している分野ですので、たくさんの若い研究者たちが後に続いてくれることを願います。
この分野に限らず、文系と理系で分けて考えずに、興味を持ったことには果敢に挑戦していただきたいと思います。一方で、私たち神戸大学の責務は、学生が学問を追究できる“研究大学”であり続けることだと考えています。教える側がその分野の研究のスペシャリストでなければ、質の高い教育を提供できないと考えるからです。教育のための知識ではなく、最前線の研究状況を知る研究者による教育を目指していきます。
さて、関塾生の皆さんには、ぜひ勉強をがんばっていただきたいと思います。小学校から高校までの学習内容は、すべての分野に通じる基礎中の基礎です。どのような教科であっても、何かの形で役に立つ時が来るはずですし、何より皆さんの将来の選択肢の幅を広げてくれる材料になります。好き嫌いで学びの幅を狭めてしまうことは、皆さんの可能性を狭めてしまうことになるのです。大学での学問や研究は、今の勉強よりもはるかに大変です。大学生活を乗り切るためのスタミナ作りとして、ぜひ勉強をがんばってください。学校で取り組む勉強には、必ず答えがありますので、その答えを見つけるゲーム感覚で挑むのもいいでしょう。苦手な教科ほど、ささいなことでいいので「面白い!」と思える何かを見つけると、一気に勉強が楽しくなりますよ!

神戸スタンダード

神戸大学では、全学年を対象に2016年度より「クォーター制」を導入しました(一部を除 のぞく)。これまでの前期・後期の授業期間をそれぞれ半分に分け、各8週で授業を行う制度です。短期間に分けることで、留学や学外活動に挑戦しやすくなり、また集中して学問に取り組めます。「神戸スタンダード」もスタート。これまで主に1、2年生が学修していた教養科目を見直し、全学年を対象に「複眼的に思考する能力」「多様性と地球的課題を理解する能力」「協働して実践する能力」の修得を目指します。専門分野を学ぶ3、4年生は「高度教養科目」を履修、分野を超え協働して学術的課題に取り組みます。文系理系にとらわれない柔軟な知識を、
4年をかけて養っていくカリキュラムが、神戸大学の特徴です。

 

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