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わたしの勉学時代

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日本の「ものづくり」を牽引してきた東三河の地で、優れた技術者たちを輩出する国立大学法人豊橋技術科学大学。
科学を探究して新たな技術を開発できる人材、グローバル社会で活躍できる幅広い視野を持つ人材の育成に力を入れています。そんな同大学で、2014年4月に学長に就任された、大西隆先生にお話を伺いました。
学びの中で広い視野を得ていく大切さについて、皆さんも考えてみましょう。

母の一大決心で東京へ

私は愛媛県松山市で生まれましたが、そこでの記憶はまったくありません。といいますのも、1年後には東京で暮らし始めたからです。松山市出身の両親が、東京に移住することになったきっかけは、母の一大決心でした。
眼科医だった母は、はじめ松山市に医院を構えていました。東京での開業を決意したのは、地方で専門医院を続けていくより は、都会のほうが患者も多く、生活を安定させられると考えたからでしょう。東京の医学校を卒業した母にとって見知った土地だったことも、決心に至った理由の一つだと思います。
父は会社勤めをしていましたが、後に医院で事務を行うようになりました。我が家の大黒柱は母だったのです。そうはいっても、私や兄にとっては、優しく時に厳しい普通の母親でした。自宅の一角が診療所でしたので、診察をする母の姿を間近に見て育ちました。

 

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母は、杉並区高円寺や中央区などで眼科医院を構えました。

算数の力が開花した授業

小学生の頃は、よくソフトボールをして遊びました。放課後になると友だちと誘い合い、近所の中学校に集まったものです。中学校のグラウンドや公園が、私たちの遊び場でした。
小学校の授業では、算数や理科といった理系教科の時間が好きでした。私が算数を好きになったのは、小学校低学年の頃の独特の授業がきっかけです。まず、各学期のはじめに、先生からわら半紙を折るように指示が出ます。
私たちは1枚で16マスできるように折り、それを教室にたくさん積み上げておきます。そして授業では、教科書の計算問題を1マスずつ使って解いていくのです。1枚分16問を解き終わると教壇に持って行きます。
それを新しい紙と交換してもらい計算を続けました。紙を何枚使ったか、つまり量をこなすことで計算スピードをつけさせる方法です。今の公文式に極めて近い授業だったと思います。この当時の先生が大変面白い方で、「自動車のナンバーを見たら、答えが10になるよう瞬時に計算式を立てる」遊びも教えてくださいました。こうしたトレーニングのおかげで、数に対する感覚が養われて力が開花、暗算が得意になりました。先生から受けた影響は大きかったと思います。
理科の授業では、実験を楽しみにしていました。そんな私の様子に、小学校中学年時の担任の先生も気づいておられたようです。実験教室のメンバーに選ばれました。地域の各小学校から数名ずつ、理科好きな子どもたちを集めて開かれていた教室です。 毎週土曜日の午後、専門の先生方の指導を受けて実験をしました。フナの解剖や電気の実験など、毎回違うテーマを学ぶことができて大変面白かったです。

塾に通い、家庭教師につき麻布中学校を受験する

私は中学受験を経験しています。入試に備え、小学5年生の頃から進学塾のテスト教室へ通い始めました。毎回テストをして、 その順位に従いクラス分けを繰り返すシステムでした。定期的に自分の学力を知ることができましたし、結果を出して順位が上のクラスに行くことが楽しかったですね。
塾は日曜日にありました。土曜日には実験教室でしたので、遊ぶ暇はほとんどありませんでしたが、なかなか充実した週末を過ごしたと思います。事情があって転校したので、週に一度、家庭教師に来てもらっていました。塾や家庭教師については、兄が麻布中学校受験をした際に、両親がいろいろと開拓したのだと思います。父も母も、私たち兄弟の学びの環境について、何かと気にかけてくれていたようです。受験勉強をしっかりしたおかげで、兄と同じく麻布中学校に合格することができました。
麻布学園は中高一貫教育で、中学・高校共に自由な校風が知られています。例えば、クラブ活動も生徒の自治によるところが大きく、大学のサークル活動に近い感じではないでしょうか。入部を強制されることもありませんでした。私はというと、大変飽きっぽく、いろいろなクラブを経験しました。図書部、数学研究会、卓球部、水泳部、スキー同好会など、いずれもあまり長続きしませんでしたね。
同級生たちは、定期テストに真面目に取り組んでいたと思います。テストは1週間行われるのですが、その2週間前から準備をしていました。各教科の出題傾向を探りながら対策をするのですが、先生方も問題をひねってきますので、なかなか一筋縄ではいかなかったですね。私は数学や理科が変わらず好きで、暗記も得意にしていました。
国語は、現代文よりも古文・漢文のほうが高得点でした。古語や文法を覚えてしまえば、解ける問題が多かったからです。
小学校の頃は「将来は医師になるのだろうな」と漠然と思っていました。母が働く姿を見ていたので、その影響もあったのでしょう。大学進学について具体的に考えるようになると、医師には向いていないのではと考えるようになりました。「得意な数学を、大学でさらに深めたい」とは思っていましたが、当時は将来の目標を明確に持っていませんでした。

 

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中学受験の時、兄から「自由自在シリーズ」や「応用自在シリーズ」の参考書を譲り受けました。大変役に立ちました。

学問で社会問題解決に挑む

東京大学を受験するにあたり、兄に参考書を譲ってもらいました。小学校から大学まで、私たち兄弟の進路はほとんど同じでした。先に道を切りひらいてくれた兄のおかげで、私は多少要領よく進めたのではな いかと思います。東京大学理科一類にも無事合格できました。
ところが、教養学部2年生の時、衝撃的な出来事が起こりました。*東大紛争です。当時は全国的に大学運動が盛んでしたが、 東大はその本拠地でした。当時の学生たちは、社会問題に対する関心が高かったと言えます。運動が激化したきっかけは、安田講堂に警視庁機動隊が入った「東大安田講堂事件」です。学問の聖域であるキャンパス内に警察が入り、力で学生たちを排除した事実は、私たちにショックを与えました。
安田講堂が建つのは本郷キャンパスで、当時の私は駒場キャンパスに通っていましたので、直接関わっていたわけではありません。しかし、東大生の一人として、学ぶこと、社会問題を考えることがいかに大切かを実感しました。そして、学生としての種々の活動に関わることになりました。

結果、教養学部には6年間在籍、2年生を5年間も経験したわけですが、中退は考えませんでした。東大紛争は終わりましたが、社会にはまだ多くの問題が散在しています。これらの問題を、今度は学問の力で解決したいと思ったのです。そこで、社会問題に深く関わることができる都市工学を専攻することにしました。
*東大紛争(東大闘争)…東京大学医学部の学部生、大学院生が、大学当局と対立した出来事。学生たちは研修医のインターン制度の廃止などを訴え、無期限ストライキを決行。安田講堂を占拠した一部の学生を排除するため、大学側が警視庁機動隊を学内に入れた事件は「東大安田講堂事件」として知られている。

 

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大学生時代の大西隆先生。

視野を広く持てる人に

私が都市工学を専攻に選んだ当時、公害や渋滞、住宅難などの都市問題が深刻でした。私は、中でも日本全体における都市の位置づけに関心を持ちました。例えば、地方から都市へと多くの人が流れてしまう問題は、賃金格差が背景の一つにあります。 一つの問題だけを考えるのではなく、環境や経済などの複数の分野から広い視野を持つことで、解決の糸口は見えてきます。
海外での経験も大きな糧になりました。特に、タイのアジア工科大学では、厳しい環境ながら学ぶことも多かったです。語学力も鍛えられましたが、アジア諸国の学生や研究者たちと交流する中で、自分自身も成長できたと思います。世界の都市を見て回った経験もプラスになりました。
皆さんの中には、様々な可能性が眠っています。将来の目標が既に決まっている人は、その専門分野を目指しつつ、他のことにも幅広く関心を持ってみましょう。豊橋技術科学大学に入学する学生の多くが、高等専門学校出身です。彼らは得意なことには長けていますが、その他分野を学ぶ機会が少なかったところがあり、大学では多様な教養を身につけようと頑張っています。
これから世界で活躍していくためには、専門の優れた技術と知識だけでは難しいでしょう。語学や政治、経済、文化、芸術など様々なことに目を向けておいたほうが役に立つはずです。まだ目標が定まっていない人は、今は様々なことに関心を持ち、視野を広げて将来の糧にしてください。

技術者の国際交流

学生の多くが工業高等専門学校出身だという豊橋技術科学大学では、国際研修プログラム(派遣・受入)に力を入れています。昨年は、日本から18名の学生が海外研修に派遣されました。
同大学のペナン校にてマレーシア科学大学の学生たちとのワークショップをしたり、日系企業や海外企業の見学をしたり、現地でホームステイを体験したりして、日本との違いを肌で感じ取りました。また、アジア各地から優秀な留学生を日本に招く受入では、豊橋技術科学大学が誇る最先端の研究施設の見学、ゼミ体験、日本の学生との交流などに取り組んでいます。アジアをリードする技術者たちが力を合わせて活躍する未来の礎が、築かれているのですね!

 

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留学生たちは、日本の学生と交流したり、日本の文化・産業を学んだりしながら、知識と技術を深めていきます。

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