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わたしの勉学時代

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群馬大学工学部のご出身であり、2015年4月より同大学の学長に就任された平塚浩士先生にお話を伺うかがいました。群馬大学工学部は、1915(大正4)
年に官立(国立) 桐生高等染織学校として開学、昨年100周年を迎えました。研究界、産業界に優秀な人材を多数輩出してきた学びの場で、先生は運命とも言える専門分野と出合われたそうです。
「学びの面白さ」について、教えていただきました!

少年時代は城跡が遊び場

 皆さんは、群馬県館林市をご存じでしょうか? 毎年夏になると、連日猛暑日を記録してニュースで話題になる地域の一つです。そんな私の生まれ故郷“上州館林”は、
長い歴史を有する城下町でもあります。館林城の跡にできた三の丸公園が、子どもたちに人気の遊び場で、私もよくここで自転車に乗って遊んだものです。城跡のお堀で魚釣りをするのも好きでしたよ。野球にも夢中でした。いつも30人ほどが集まって遊んでいましたので、2チームに分かれて試合ができました。とても楽しかったです。
 群馬県は、館林もめんや桐生織など、織物の産地としても知られています。私の父もまた、小さな綿織物の工場を営んでいました。自宅と工場は、目と鼻の先にありましたので、職人さんたちが機を織る音がよく聞こえてきたものです。そんな館林の風景も、今ではだいぶ変わりました。私が小さい頃は、舗装されていない道路ばかりでした。馬車も通行していたのですよ。道は、乾燥すると砂すなぼこり埃が舞まったり、雨の日はぬかるんだりと大変でしたが、不衛生な印象はまったくありませんでした。地域の人々が協力し合って、いつも掃き清められていたからでしょう。私も、日曜日の朝早くに起きて、道路の清掃活動に参加していました。今よりもずっと、地域内のつながりが強かったと思います。

 

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子どもの頃、織物工場の慰安旅行で、栃木県の川治温泉に行ったことがあります。他にも、いろいろな場所へ出かけるなど、充実した少年時代でした。

読解力が身につき学力アップ

 私には姉が3人います。彼女たちには、よく使い走りをさせられました。冬になると、石焼き芋屋さんがトラックで回ってくるでしょう。その音を聞きつけると、私を走らせて買いに行かせるのです。大きな声を出してトラックを呼よび止め、焼き芋を買うのが恥ずかしかったのでしょうね(笑)。ですが、こういった経験が、今となってみれば、自分の行動力の向上に役立ったのではと思っています。姉たちには逆さからえませんでしたが、その一方で、私には頑固でわがままな一面もありました。この性格は、父に似にたと思っています。そんな少年時代の私は、とにかく遊ぶことに夢中。毎日遅くまで外を走り回っていました。小学校へ通うのは楽しかったのですが、授業にはあまり興味が持てなかったと記憶しています。勉強が好きになったのは小学5年生あたりからです。担任の先生が、大変熱心に指導してくださる方で、信頼していました。国語の授業で、漢字のなりたちについて話してくださったのですが、それがとても面白かったのです。大好きな先生の授業だと、どんどん熱中できるようになります。子どもってそんなものですよね(笑)。中学校に進学後も、熱心に指導してくださる先生のことを好きになり、その好きな先生の担当教科が得意になるということが何度もありました。
 中学時代は、より熱心に勉強をするようになりました。その理由の一つが「出題の意図が理解できるようになったから」です。小学生で漢字のなりたちに興味を持ち、国語が好きになりました。そのおかげで、文章を読み解とく力が養われたのです。
数学や社会科などの文章題でも何を問われているかわかるようになったので、勉強が好きになりました。国語力を身につけることは、
他教科の学力アップにも通じるということを理解した経験です。ただし、英語にだけは苦戦を強しいられました。新しく学ぶ言語の難しさを実感しましたね。初めのうちは、単語や教科書の英文を丸暗記してしのいでいましたが、覚えることが増えるにつれ苦
しくなりました。そんな私を、母は心配していたのでしょう。「NHKの英語のラジオ講座があるから」と、朝早くに私を起こしてくれたのです。冬は部屋を暖かくして、ラジオの準備をしてくれました。有り難かったですね。

2人の恩師との交流を通して

思い返してみると、中学の同級生たちの勉強に対する意識は、とても高かったように思います。大学進学率が低かった当時のことを考えると、地方の中学校でありながら、大学を見み据すえていた生徒が多かった印象です。そうした仲間たちと競い合いながら、私は栃木県立足利高等学校に入学しました。優秀な生徒が集う進学校であり、その上、当時の指導方法は大変厳しいものでした。特に、テストの成績ごとにクラスを移動する進学塾のようなシステムがつらかったですね。学期単位で入れ替えがありましたから、常に学力の順位がわかるようになっていました。勉強量は、中学時代に比べて格段に増えたと思います。通学時間もかかり、部活動をする暇はありませんでした。1番上のクラスに入るまでには、とても時間を要しました。中学から高校時代にかけ、理系の分野に興味を持つようになりました。ちょうど、アメリカ合衆国と旧ソビエト連邦の間で宇宙開発競争が過熱していた時期です。日本においてもロケット開発が始まりました。連日のようにニュースで伝えられる科学技術の進歩に、大変感動したことを覚えています。そんな私を導いてくださったのが、高校時代に出会った2人の恩師です。1人は化学の田部井和三郎先生で、夏休みに理科クラブを開いてくださいました。様々な実験を通して化学の面白さを体験することができたこと、とても感謝しています。もう1人は、数学の谷津昭五郎先生です。谷津先生から教わった微分積分は大変わかりやすく、後々まで役に立ちました。恩師との交流を通して、理系分野への興味を深めていった私は、群馬大学工学部へと進学しました。ただし、当時は、将来への明確な目標を持っていませんでした。理系分野にはどのような学問があり、その知識と技術がどう社会に役立っているのか、具体的に想像できる情報が得られなかったからです。

 

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母は、学ぶことの大切さをよく理解していて、子どもたちのサポートに熱心でした。

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量子化学との運命的な出合い

大学2年次の専門課程で、運命的な出合いを果たしました。永井洋一郎先生が担当された、物理化学の講義でのことです。そこで、私が興味を持っていた物質の色の本質は、物理化学の一分野である量子化学により説明できることを知りました。アメリカ留学から帰国されたばかりの永井先生から、海外での最先端の研究について教わることは、とても刺激的な体験でした。それからは「量子化学を専門分野にするんだ!」と思いながら、毎日わくわくして過ごしたものです。また、小さい頃から染色や織物が身近だった私にとって、発色の研究は興味深いテーマの一つでした。さらに、量子化学には高校時代に谷津先生から教わった微分積分も必要な学問だと知り、「これは運命の出合いだ!」と思ったのです。他にも、東京大学から来られた右田俊彦先生からは、私の研究にとっても重要な「有機電子論(反応機構)」について、第一級の知識を学ぶ貴重な機会を得ることができました。また、研究室時代にお世話になった松井弘次先生からは、研究者としてあるべき姿を教えていただきました。群馬大学に入学してよかったと、心から思います。
 私が現在専門とする光化学は、物理化学の一分野です。例えば、がん細胞を発見する薬剤を作る時に役立ちます。がん細胞は、周囲の酸素を消費しながら増殖します。ですから、がん細胞がある部分は、酸素が少なくなっているのですね。そこで、酸素が少ないと発光する薬剤を投与すると、がん細胞がある場所が光るというわけです。この薬剤を作る際に、光化学の知識が応用されているのです。このように、一般には広く知られていなくても、世の中に役立つ学問がたくさんあることを、ぜひ知っておいていただければと思います。

「なぜ?」「どうして?」が大事

 学問の本質であり、一番の魅力は、「なぜ?」「どうして?」を探究するところにあります。様々な疑問を、多角的なアプローチで解き明かしていくことこそ、学問の魅力だと思います。
 皆さんには、ぜひ、たくさんの「なぜ?」「どうして?」を見つけてほしいと思います。
身近なことへの疑問でもいいですし、宇宙などの果てしない存在を対象にした分野への疑問でもいいでしょう。その疑問は、すぐに解決できなくても構いません。解決できなければ、ますます疑問が深まり、「知りたい!」という欲求が生まれてくるはずです。そのエネルギーが、大学での学びにつながっていくと思います。

第一線の研究拠点

「第一線の教育拠点であるためには、第一線の研究拠点でなければなりません」と、平塚先生はおっしゃいます。群馬大学では、第一線の研究拠点であるために様々な取り組みが行われています。その一つが『重粒子線医学推進機構』での重粒子線によるがん治療です。体を傷つける部分を最小限に、かつ効果的にがん細胞を取りのぞくことができる最新の治療法です。また『生体調節研究所』では、生活習慣病をはじめ、免疫系、神経系など、現代の複雑な病に対する研究を進めています。国内外と連れん携けいしながら、独自性、継続性のある研究拠点として期待されています。
 そんな同大学では、毎年夏、小中学生を対象にした『群馬ちびっこ大学』を開催さいしています。実験や展示を通して、学ぶ楽しさを実感するイベントです。ここから未来の大科学者が生まれるかもしれませんね!

 

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今年の『群馬ちびっ子大学』は、8月6 ~ 9日の4日間開催。6590人の子どもとその家族が参加、大盛況だったそうです!

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