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わたしの勉学時代

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2015年に創立50周年を迎えた京都産業大学は、
創設者であり初代総長の荒木俊馬博士の想いを受け継ぎながら、広く国際社会で活躍する人材の育成に努めています。天文学やタンパク質研究など世界トップレベルの研究も強みの同学で、2014年10月学長に就任された大城光正先生にお話を伺いました。中学生の時、先生は英語と運命の出合いを果たし、それが研究者への道へとつながったそうです。

喘息の発作に苦しみながら

 世界遺産・厳島神社のある広島県廿日市市が、私の生まれ故郷です。当時は佐伯郡廿日市町と呼ばれていました。実家は、中小企業の会社員だった父、専業主婦の母、3歳下の弟と4人暮らし。ごく一般的な家庭だったと思います。
 幼少の頃の私は体が弱く、喘息の発作もありました。風邪をひくと、とにかく息苦しかった記憶があります。母にはよく小児に科医院へ連れて行かれました。激しい運動の後だけでなく、大笑いした時でさえも発作が起きていたので、家族には大変心配をかけたと思います。今思えば、喘息のこともあり甘やかされて育ったかもしれません。
発作は小学校高学年あたりから少なくなりましたが、今でも出張の時などは薬を持って行きます。
発作が少なくなってからは、豊かな自然の中で力いっぱい過ごしました。学校から帰ると、毎日のように近所の友達と一緒に遊び回ったものです。家から徒歩10分の距離に海があったので、夏休みには海パンにゴム草履姿、タオルと浮き輪を持って出かけました。家の裏山に登りセミを獲った記憶もあります。夜になると「ガチャガチャ」と鳴くクツワムシを捕まえに行きました。

 

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子どもの頃は、自分が喘息だと知らなかったので、「運動は得意なのに、後で息苦しくなるのはなぜだろう?」と思っていました。

「広島カープの選手になる!」

 小学校時代の夢は「*1広島カープの選手になる」こと。“野球王国”広島で育った少年が、プロ野球選手、それも県民から愛されているカープの選手に憧れることは自然なことでした。広島には甲子園の常連校があり優勝も果たしていたため、自分にとっても遠い夢ではないと思っていました。
 そんな私を熱心に応援してくれたのは父です。私は同じ年齢の子どもと比べて背も高く、運動神経もよいほうでしたので、期待していたのだと思います。仕事で疲れているはずなのに、帰宅後はキャッチボールの相手になってくれました。暗くなってボールが見えなくなるまで、根気よく付き合ってくれたことを覚えています。ところが、練習を重ねていくうちに、だんだんと「自分は肩が強くない」ことがわかってきました。肩が強くなければ、外野手などは遠くへボールを投げることができないなど、いずれ上達に限界がやってきます。小学校の野球チームでは、先生に言われて一塁手を務めていましたが、今思えば肩の力を見抜かれていたのではないかと思います。中学校に進学するまでには、野球選手への興味は薄らいでいきました。

 

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幼少期の大城先生。デパートでの食事を終え、広島カープ戦に向かう前の一枚。

言語のネーミングの謎

カープの選手を諦めた私に、父は「将来のためにも、大学は卒業しておいたほうがいい」と言いました。そして、親の期待を感じながら、勉強に取り組むようになりました。中学校で初めて英語に触れ、非常に興味を抱きました。特に不思議だったのは、日本語と英語の命名(ネーミング)の違いです。

例えば家であれば、日本語は“イエ[ie]”と発音しますが、英語だと“house[haus]”ですね。本であれば“ホン[hon]”と“book[buk]”です。同じ物を指すのに、なぜこうも発音が異なっているのか。命名の起源や法則はどうなっているのか。疑問が次々と浮かんできたのです。この“言語のネーミングの謎”は頭の片隅に残り続けました。
 中学生の頃から、漠然と将来のことを考えるようになりました。人と同じことをするのがいやだったので、自分のペースで仕事ができる研究職に魅力を感じました。理科クラブに入っていて、実験が楽しかったことも理由の一つです。白衣を着た“他人と違う自分”も、ちょっとだけ優越感がありましたね。一方で、英語については、その知識を活かせる職業といえば英語教諭しか思い浮かびませんでした。このことも科学者を目指す理由になりました。
 高校は広島市立舟入高等学校に進学。当時は総合選抜制度が導入されており、いくら学力が高くても必ず第1志望校に入れる
わけではありませんでしたので、希望通りに進めたことは幸運だったと思います。 自分のペースを大切にする私の受験勉強は、いつも「これ!」と思った参考書探しからスタートしました。参考書選びのコツは、自分好みであるかどうかです。文字の色、デザインが気に入ったという理由で選んでもいいのです。大事なのは、そのお気に入りの一冊を徹底的に理解すること、各教科の分野をまんべんなく学習すること。そうすれば、例え入試で満点を取れなくても、合格点には達するはずです。参考書選びに迷っている人は、ヒントにしていただければ幸いです。

科学者志望から再び語学へ

舟入高校は、地元の国立大学である広島大学に毎年百数十名の入学者を輩出する進学校です。当然、広島大学の入試対策に長けており、私たちにも地元の大学への進学を強く勧めていました。しかし、私が現役時代に進学を希望したのは大阪外国語大学でした。高校で学ぶうち、やはり語学を追究したい、“言語のネーミングの謎”を解き明かしたいと思うようになったのです。他の進路は考えられませんでした。赤本(大学入試シリーズ)一冊を頼りに受験勉強をしましたが、今思えば無謀なことでした。
広島の高校生がたった一人で、大阪外国語大学の入試について何のノウハウもテクニックも身につけないまま本番に臨んだからです。後で知ったことですが、大阪の予備校には外国語大学専門のコースがあったようですね。対策が十分でなかったので、結果は当然不合格。その後、広島大学の文学部文学科に定員が10名に満たない言語学専攻があることを知りました。「ここでなら“言語のネーミングの謎”について学べるはずだ!」と、はりきって進学を決めました。

オンリーワンの学問を追究

大学進学直後は*2大学紛争まっただ中。半年間は自宅待機を指示されましたので、
その間に英会話教室や、英文タイプライターの教室に通っていました。世界各地の文学作品を読み漁ったのもこの時期です。その中で、言語学専攻の関本至先生の自宅を訪ね、いろいろと質問をする機会がありました。そこで私は、中学時代から抱き続けてきた“言語のネーミングの謎”について思い切って質問したのです。しかし、先生の答えは「それはわからない、きっと解決できないでしょう」というものでした。「今の学界では、言語の起源については取り上げていません。言語学とは、まず前提としてそれぞれが専門とする言語があり、その資料をベースに、実証的な方法で研究する経験科学です」この時の衝撃は言葉に表せ
ません。もともと言語そのものに興味があり、何語を専門としたいか、考えたこともありませんでした。「これから何を研究すればいいんだ」と落ち込みましたが、関本先生のギリシア語、同じく言語学専攻の吉川守先生が専門とされていたシュメール語から、ヒッタイト語を研究しようと思いつきました。ギリシア語と同じインド・ヨーロッパ系の言語で、シュメール語と同じ人類最古の言語資料とされている楔形文字言語である、両先生の専門とも重なるヒッタイト語。何より、日本には本格的な研究者がいない“オンリーワン”の学問であるところが魅力でした。資料も情報も乏しく研究は困難を極めましたが、たくさんの方の手助けもあり、刺激的な研究者生活を送ることができました。
*2大学と学生が対立状態になること。大学闘争ともいう。日本では特に1960年代末の全共闘運動による対立を指す。

 

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大学1年生の時、国語学者の森田武先生の授業を受け、ハ行からワ行への変化(例:川<かは→かわ)など言語が持つ歴史の面白さを知りました。

“苦手の垣根”を取り払おう

私は、ヒッタイト語を通じて、言語の面白さを追究できました。紆余曲折こそありましたが、中学生時代に抱いた興味・関心を貫けたと思っています。
とことん追究したくなる興味・関心の対象を見つけるためには、まず苦手意識をつくらないことです。勉強でもスポーツでも同じで、どのような分野にも好きになれるきっかけはあります。算数・数学が苦手であれば、数式の美しさに注目してみてください。地球上どこででも通用する数式、無限大の“数”がある世界ほど美しいものはありません。
 自分自身でつくってしまっている“苦手の垣根”を取り払うと、次々と興味が湧いてきます。その興味のすべてが、皆さんにとって将来“オンリーワンの財産”になるはずです。何事にもチャレンジの精神を忘れずに、がんばってくださいね!

Global Commons

全8学部が1つに集まっている京都産業大学の“ワンキャンパス”では、学部や教職員の間に壁がない、自分の可能性を最大限広げられる学びの環境づくりに注力しています。
 その象徴的な場所の1つが、2016年3月に完成したサギタリウス館の1階にあるGlobal Commonsです。同大学の外国語学部10専攻語を活かし、多言語・多文化について「共に学び合う空間」であり、学部を問わず全学生が気軽に利用できるのが特徴です。洗練されたデザインで広々とした印象を与える空間では、勉強方法や留学などについて気軽に相談できたり、モニタやホワイトボードを使ってディスカッションできたり、本やDVDで多言語に触れられるスペースがあったりと、多様な学習スタイルを実践できます。いきいきと学ぶ学生たちの姿が見られる場所です!

 

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留学生とも気軽に交流しています。

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