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わたしの勉学時代

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2014年度、大幅な組織改革により新しく国際資源学部、教育文化学部、医学部、理工学部の4学部体制
となった国立大学法人秋田大学。国内唯一の鉱業博物館を有するなど、最先端の教育・研究環境に力を注ぐ
同大学で、2016年4月に学長に就任された山本文雄先生にお話を伺いました。医療・教育の現場を経験
されてきた中で、医師として強く思うこととは? 未来を担う皆さんへの熱いメッセージも必見です!

わんぱく坊主と母と物差し

 私は、福岡県小倉市(現北九州市)の商業地で育ちました。家のすぐ近くに東洋陶器株式会社(現TOTO株式会社)の本社があり、そこの空き地へよく潜り込んだものです。わんぱく坊主だったんですね。友達と競って、廃棄された陶器の欠片を拾いました。玩具どころか物自体が少なかった時代、子どもにとって陶器のツルツルとした触感はとても新鮮でした。
 父は歯科医院を開業していました。自宅を居住スペースと医院に分けていましたので、私も自由に行き来していました。待合室では患者さんと一緒にテレビ番組を視聴したものです。当時はテレビを持つ家庭が珍しかったため、しばしば近所の人たちが集まって来たことを覚えています。国民的スターだったプロレスラーの力道山の試合になると、とりわけ賑やかでしたね。私も夢中になりました。そして、つい長居をすると、決まって母から叱られました。
 寡黙な父とは対照的に、母からは「勉強しなさい!」と口うるさく言われました。
優秀だった6歳上の兄とは正反対だった私が心配だったのでしょう。小学生の頃は、宿題をほったらかしにする度に叱られたものです。机に向かって居眠りをしていたならば、叩き起こされました。そんな時、決まって母は私に「物差しを持って来なさい」と言いました。その物差しで私を叩くためです。母に物差しを持って行く時は、「これは自分が叩かれるための物差しなんだ……」と半ば諦め、覚悟を決めていました。
 それで宿題をするようになればよかったのですが、わんぱく坊主の私は凝りませんでしたね。毎年夏休みの1か月間は、山口県下松市にある祖母の家に預けられていました。海と山が近くにある土地で、下町で育った子どもにとっては珍しいものばかり。
海に潜ってタコを獲ったり、山で虫を追いかけたり、やることが山積みです。母からは「遊んでばかりいないで、夏休みの宿題もしっかりするように」と言われていたのにも関わらず、1か月後に迎えが来た時には、遊ぶことに夢中で何も手をつけていませんでした。そして、いつもの「物差しを持って来なさい」が。その後は、母から叩かれながら宿題をする日々が待っていました。母と物差し。少年時代の印象深い思い出です。

 

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小さい頃は「総理大臣になりたい」と言っていたのを思い出します。兄からはよく「おやつをくれたら総理大臣にしてあげる」と言われ、何度も騙されました(笑)。

あるテストでの出来事

宿題は後回しにしがちでしたが、勉強が嫌いだったわけではありません。元来負けん気の強い性格で、テストでは誰よりも良い点数を取るつもりで勉強していました。
小学校の4年生の時です。あるテストで残り2問というところで制限時間になってしまい、私は先生に「時間を延長してほしい」
と訴えました。当然、許可してもらえません。私は「あの2問を解けなかったせいで、1番になれないかもしれない」と泣いて悔しがりました。配慮してくれなかった先生を恨む気持ちさえありました。結局、結果は1番だったのですが。この時、先生は私に「どんなにがんばっても、思うような結果が出ないことがある。今回のように思うようにできなくても、最上の結果が出ることもある。置かれた状況の中で、やれることを精一杯やりなさい」とおっしゃいました。厳しい中にも教え子への温かい眼差しが感じられる先生で、私はとても好きでした。
 中学校ではバスケットボール部の活動に励みながら、伸び伸びと過ごしていました。ところが、兄の大学進学を機に状況は一変します。いずれ父の跡を継ぐものとばかり思っていた兄が、親に反発して経済学部へ進んだのです。そこで、両親は私を跡継ぎにと考えたのでしょう。進学校である福岡県立小倉高等学校を受験するように言いました。小倉高校へ入るためには、約700人いた同級生のうち10位以内に入る学力をキープしなければなりません。クラブ活動を引退した後、家庭教師にもお世話になりながら勉強漬けの日々を送りました。そして、無事に小倉高校に合格できました。

思いがけず医学の道へ

 高校の同級生たちはとても優秀でした。
入学後最初のテストの結果が数百番台だったことを今でも覚えています。中学時代は常に成績上位だったので、大変ショックでした。そこで心が折れなかったのは、中学校時代の先生から「大切なのは、これからどうやって成績を上げていくかを考えることだ」と励ましていただいたからです。気持ちが少し楽になって、勉強に前向きに取り組めるようになりました。
 高校2年生への進級を控え、文理選択を考える時に、父から「大学は医学部か歯学部へ進学するように」と言われました。ここへきて初めて、兄の代わりに私が跡継ぎになるのだと悟りました。当時の私には、特に学びたい分野はありませんでしたが、兄の進んだ大学には密かに憧れを抱いていました。兄は大学でアメリカンフットボールをしていて、それがとてもかっこよかったからです。しかし、それを親が許すはずもありません。「兄は好きな道に進めたのに、なぜ自分はだめなのか」などと言って反抗もしましたが、最終的には「国立の医学部に合格したら車を買ってあげよう」という甘言に乗せられ(笑)、医学部進学を決めました。今の学生さんは、当時の私と比較すると大変真面目ですね。面接をしていると、
彼らの多くが明確な意志を持って医学の道に進もうとしていることがわかります。とても素晴らしいことだと思います。
 私は浪人生活の後、鳥取大学医学部へと進みました。受験勉強の最中は、高校時代の仲間の存在が励みになったことを覚えています。仲間のがんばる姿があったからこそ、私も負けん気を存分に発揮できました。

 

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大学1年生の時、国語学者の森田武先生の授業を受け、ハ行からワ行への変化(例:川<かは→かわ)など言語が持つ歴史の面白さを知りました。

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幼少期の大城先生。デパートでの食事を終え、広島カープ戦に向かう前の一枚。

「自分が助けるんだ!」

 私は秋田大学にやって来た時、心臓血管外科医として「秋田の医療は秋田県内で完結させる」「緊急手術は絶対に断らない」と
いう二つの信念を貫くことを決めていました。大阪府吹田市にある国立循環器病センターで厚生技官として勤務していた時、地方から手術を受けに来る患者さんとご家族の苦悩を、間近で見てきたからです。もう一つ、病院が救急患者の受け入れを拒み、救急車でたらい回しにされた後に不幸にも亡くなったというニュースが当時問題となっていたことにも心を痛めていました。
どんなことがあっても患者さんの命を救うことを最優先にする。「自分が助けるんだ!」という強い意志を持って医療をする。
それだけは守り通してきました。
 医を学ぶ若い方々には、「自分が助けるんだ!」という強い志を持ってほしいと願います。私は医師として、阪神・淡路大震災と東日本大震災、二度の震災を経験しました。非常時下で、志ある医療関係者たちは、誰よりも心を動かし積極的に行動してきました。そのような中、東日本大震災が発生した時、医学部の学生たちから「被災地へボランティアに行く」の声が上がらなかったことに危機感を抱きました。秋田でも大きな揺れがあり、停電などで大変だったかもしれませんが、甚大な被害のあった地域に関心を向けられなかったことは残念でなりません。大学としても、志を持った医療人を育てなければならないと痛感した出来事でした。他者の気持ちに寄り添い、心を動かし「自分が助けるんだ!」と行動すること。その志があれば助かる命がある。
これこそが医の原点なのです。

他者の気持ちに寄り添う心

 他者の気持ちに寄り添う心を、皆さんもぜひ育んでください。様々な場所へ出かけ、いろいろな物事を見て感動する体験を増やしてください。医療関係者に限らず、人として大切な心を若いうちから養ってほしいと願っています。
 また、先生や保護者の皆さんには、子どもをよく観察してほしいと思います。最近の子どもたちは、大変なストレスの中で忙しくがんばっていますね。小学生の8%、中学生の23%に、うつの傾向があるというデータが出ています。中には、うつ病を発症している子どもも少なくありません。社会に情報が溢れ、毎年のように状況が大きく変化していく中で、子どもたちの心のケアは重要な課題です。ぜひ、将来を担う子どもたちの心に寄り添ってあげてください。

地方創生センター新設

 2016年、秋田大学は「地域協きょうどう働・防災部門」と「地域産業研究部門」の2部門からなる「地方創生センター」を新設、
地域産業の成長や防災等の研究、地域の将来を担う人材の育成などを目指します。2部門のうち「地域協働・防災部門」では、地域振興活動、人材育成を推進し、地域の活性化に貢献するための活動を行っています。
夏休み期間や土日祝日には秋田県内の小中学生と保護者を対象にした「秋田大学ぼうさい教室」などを開催、災害時に適切な行動がとれるよう知識を共有しています。毎年夏休みには、小学生と保護者を対象にした「秋田大学子ども見学デー」も実施していますので、ぜひ参加してみましょう。
 地域のことをよく知り、課題を発見し解決することは、山本先生がお話くださった「他者の気持ちに寄り添う」ことにもつながる取り組みですね。

 

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秋田大学の教員が、地域の人々に医学や臨床心理学、理工学についてわかりやすく解説する「メディカル・サイエンスカフェ・ネクスト」も開催中です。

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