- 今月のタイムス特集②
日本をはじめ、ほとんどの国では1月1日に新年を迎えます。多くの国がグレゴリオ暦(太陽暦、新暦)を採用しているからですが、世界を見渡すと、旧暦やその国独自の暦によって、1月1日以外をお正月としている国もあります。世界各国では、いつ、どのような新年を迎えているのでしょうか?
中国をはじめ、台湾や香港、インドネシア、マレーシアなどアジアの多くの国では、旧暦の正月である「旧正月」を新年としています。「春節」や「Chinese New Year」とも呼ばれ、1年で最も重要で伝統ある年中行事として、家族や親戚などが集まって盛大に祝います。
時期は毎年変わりますが、大体は1月下旬から2月上旬の間で、2022年の春節は2月1日。その前日の1月31日~2月6日が7連休になります(中国の場合)。休みの日程は国によって異なるものの、シンガポールなどでもこの期間中に祝日が設けられ、毎年にぎやかなお祭りやイベントが行われています。
中でも特に華やかなのが、シンガポールの「チンゲイ・パレード」と「リバー・ホンバオ」。チンゲイ・パレードのチンゲイは“衣装と仮面の芸術”という意味。シンガポールの多民族文化を象徴するイベントで、様々な民族の人が街を練り歩きながら熱気あふれるパフォーマンスを披露。きらびやかな衣装と音楽も同時に楽しめます。
リバー・ホンバオ(河畔紅包)は、マリーナベイ(湾)エリアで開催されるお祭りで、“紅包”とはお年玉のこと。目玉は、中国の神話や伝説などをモチーフにした豪華でカラフルなランタン(提灯)で、その年の干支や福の神の巨大なランタンが人気を集めます。乗り物やゲームなどのアクティビティも用意され、ステージでは歌劇や大道芸など多彩なショーを開催。食べ物や雑貨の屋台がいくつも立ち並び、毎晩花火が打ち上がるなど、誰もが楽しめる様々なイベントが10日間ほど続きます。
韓国やベトナムも旧正月を祝うので、日は毎年変わります。韓国では当日(2022年は2月1日)と前後2日の合計3日間が公休日になります。韓国の旧正月は「ソルラル」と言い、新暦の1月1日を「新正」と言うのに対し、「旧正」とも呼ばれます。祖先を祀る儀式を行って、家族みんなでトック(餅)が入ったお雑煮「トックク」を食べるなど、日本と似た風習もあります。
ベトナムの旧正月は「テト(Tet)」と言い、新暦の1月1日よりも大々的に祝います。祝日が少ないベトナムでは1年で一番長い休暇になるため、故郷に帰省して家族や親戚と新年を迎えるのが一般的な過ごし方。やはり日本と似ていますね。
モンゴルでは、チベットの太陰太陽暦に基づく伝統的なモンゴル暦によって、旧正月の「ツァガンサル(ツァガーンサルとも言う)」を新年として祝います。ツァガンサルとは“白い月”という意味。遊牧民のモンゴル人にとって乳の色である白は、純粋さを表すと同時に尊い色でもあります。
ツァガンサルは毎年変わりますが、通常は1月下旬~2月下旬。うるう年の算定方法によっては3月になることもあります。日付は、モンゴル暦に基づいてチベット仏教の高僧が決定します(2022年は2月1日)。
元日には日の出前に起き、それぞれの誕生年や干支、性別などによって吉とされる方角に向かって歩く「ムルガルガフ(足跡の行事)」を行います。その後、日の出と共に家族と挨拶を交わし、家族や親戚、親しい人たちが集まって、ごちそうを囲んで祝います。ツァガンサルに欠かせない食べ物は、肉を小麦粉の皮で包んで蒸した「ボーズ」と呼ばれる餃子で、幸せを包み込むという縁起をかついだものです。各家庭では1か月も前から家族総出で大量のボーズを作ったり、買い物や大掃除をしたりして、1年で一番大切な日を祝う準備を整えます。
様々な文化が混ざり合っているタイでは、お正月が年に3回あります。新暦による新年(1月1日)と中華系タイ人が祝う中国の旧正月、そしてタイ独自の旧正月「ソンクラーン(Songkran)」です。一番盛り上がるのが4月のソンクラーンで、4月13~15日の3日間は国の祝日になっていて、この時期に長めの休暇をとり帰省するのが一般的。
ソンクラーンのメインイベントと言えば、「水かけ祭り」。タイではもともと新年の伝統的な行事として、仏像や仏塔、年長者の手に水をかけてお清めをする風習がありました。4月は1年で一番暑い時期のため、暑さをしのぐという役割もありましたが、近年はこれが転じて、地元の人だけでなく観光客も巻き込んで互いに水をかけ合って楽しむ水かけ祭りに発展。今ではタイ観光の目玉のひとつになっています。
スリランカの新年もタイと同じ4月。毎年大体13日か14日で、年が明ける時間も分単位で決まっていて、その日時は占いによって決定されます。
ベンガル暦を使うバングラデシュの新年は4月14日。基本的に休みは1日くらいです。
東アフリカにあるエチオピアは、独自のエチオピア暦を使います。1年を13か月に分け、30日の月が12回と、5日(うるう年は6日)だけの「13月」があります。この暦に従ってエチオピアの新年は9月11日(うるう年は12日)。1年で最も重要な祝日で、朝には家族で教会へ行き、午後には新年の歌を歌ったり、友人と花のブーケを交換したりするのが習わし。近年は日本の年賀状のようなカードを送り合うことも。
お正月や新年のことは「ウンコタタシ(Enkutatash)」と言います。“宝石の贈り物(Gift of jewels)”という意味で、由来は旧約聖書に登場する古代イスラエルのソロモン王がシバの女王に指輪を贈ったという伝説。2人の間に生まれたのが、エチオピアの初代王メネリク1世とされています。
エチオピアは時間の概念も独特で、日が変わるのは国際時間の午前0時ではなく朝6時。12時間を1サイクルとする「エチオピア時間」が使われています。
インドのお正月「ディワリ(Diwali)」は、太陰太陽暦のヒンドゥー暦に基づき、毎年変動します。10月下旬~11月中旬の間の新月の日と決まっていて、2021年は11月4日でした。国家公認の祝日ではありませんが、5日間あり、インド最大のお祭りとして盛大に祝います。「光のフェスティバル」とも呼ばれ、至るところにキャンドルやイルミネーションが飾られ、街全体がきらびやかな光に包まれます。
カラフルな色粉を使って玄関先や床などに「ランゴリ」という模様を描くのもディワリの楽しみのひとつ。神様を迎えるにあたり、神様に入り口の場所を知らせるためなのだとか。
ディワリは初日から5日目まで基本の過ごし方が決まっています。1日目は幸運を呼ぶため家の大掃除をし、2日目には体を清めてランゴリを描きます。3日目(ディワリ当日)は、家族が集まり神棚を囲んで祈りを捧げる最も重要な日。寺院にお参りをして新年を祝います。街では花火や爆竹が夜通し打ち上げられます。4日目は親戚や友人が贈り物を持って集まり、最後の5日目は兄弟姉妹による祝福の日。互いの幸福を祈って食事をしたり、贈り物を渡したりして絆を深めます。
合い言葉は「ハッピー・ディワリ!」。クリスマスのように華やかなインドのお正月、一度体験してみたいですね。