- 特集②
ヒントをもとに当てはまる言葉を考えてマス目を埋めていくクロスワードパズルは、様々な国で楽しまれています。『関塾タイムス』の「クロスワード クイズ」コーナーもファンが多く、おもしろかったという声が読者アンケートで寄せられています。
そこで今回は、『関塾タイムス』のパズルがどのように作られているのかを紹介します。裏側を知ると、パズルを解くのがきっともっと楽しくなりますよ!
パズルとは、言葉や数字、絵や図形、専用の道具などを使って謎を解く遊びのことで、様々な種類があります。クロスワードパズルやジグソーパズル、知恵の輪などがよく知られています。英語の“puzzle”という言葉が生まれたのは17世紀頃で、もともとは「混乱させる」という意味の動詞でしたが、名詞の意味も持つようになり、徐々に現在の意味になっていきました。
よく似た意味を持つ言葉に「クイズ」があります。違いを簡単に言うと、クイズは知識があれば解けるもので、パズルは知識があっても考えないと解けないもの、また知識がなくても考えれば解ける可能性があるものです。そして、クロスワードパズルは、両方の要素を持っています。ヒントから言葉を考える部分はクイズに近いですが、言葉がわからなくても他の言葉とのつながりを考えて解くことができます。
パズルという言葉が生まれるより前から、パズルのようなものはありました。例えば、タテ、ヨコ、対角線上の列に並んだ数字を足すと、どの列も同じ数字になる魔法陣というパズルは、古代中国で生まれたものだと考えられています。紀元前2000年頃、夏王朝の始祖が亀の甲羅に描かれた魔法陣のような模様を発見し、神のお告げだと考えたという伝説が残っています。魔法陣は、西洋にも神秘的な意味を持つものとして伝わり、絵画などに描かれました。
神秘的な起源を持つパズルですが、時代が下るにつれて遊びとしてのパズルが出てきます。特に18世紀の産業革命以降、人々の生活に余裕ができ、大量生産も可能になったことで、多くのパズルが生まれました。例えば、ジグソーパズルは、1760年代にイギリスの地図職人が、ピースが各国の形をしていて完成すると地図ができるパズルを子どもの教育のために作ったのが最初だと考えられています。クロスワードパズルの登場はもう少し後で、1913年にイギリス人が雑誌に載せるために考案したとされています。
クロスワードパズルには、必ず守らなければならない厳格なルールはありませんが、多くのパズル雑誌などで採用されているような基本となるルールはあります。外国語と日本語でも違いがあります。日本語での主なルールを確認しておきましょう。
言葉のルール
①カタカナかひらがなに統一する。
②小さな文字(ッ、ャ、ュ、ョなど)は大きな文字に統一する。
③同じ言葉を2回以上使わない。
黒マスのルール
①四隅に黒マスを置かない。
②黒マスは縦、横で連続しない。
③黒マスで盤面を分断しない(全ての白マスをつなげる)。
『関塾タイムス』の場合は、次のような手順で作っています。
STEP1
キーワードに関係する言葉を集める
毎号キーワードが決まっているので、キーワードに関する言葉を考えたり調べたりしてリスト化しておきます。その中から、最終的な答えになる言葉を決めます。
STEP2
マス目に言葉を当てはめる
基本ルールに従って、盤面に言葉を当てはめていきます。8×8だと、4~5文字の言葉を多く使います。埋まっていくにつれて文字数などが限られていくので、STEP1のリストにない言葉も必要に応じて増やしながら、全てのマス目を埋めます。
STEP3
タテのカギ、ヨコのカギを考える
言葉の先頭になるマスに順番に数字を入れて、それぞれのヒントになる問題文を考えます。タテ、ヨコ、全てのカギができたら完成です。
作る時に気をつけていることや心がけていることを、手順ごとに具体的な例を挙げながら説明します。
STEP1
辞書やインターネットを活用する
自分が知っている言葉だけでは足りないので、毎回辞書を引いたりインターネットで調べたりしています。最近はインターネットで調べることが増えましたが、クロスワードパズル専用の辞典もありますし、漢和辞典や人物辞典も使います。
クロスワードパズルを解くコツやパズルの魅力、崔さんがパズル作家になったきっかけについても伺いました。関塾生の皆さんへのメッセージもいただきましたよ!
能動的に楽しむことができるところがパズルの魅力です。本や漫画などの読み物は受動的で、情報を一方的に受けとるという感じですが、パズルは自分で考えて解くものなので、自分から情報を手に入れにいっているという楽しさがあります。
また、パズル雑誌やクイズ番組などが人気なのは、人には、わからないことが気になる、知りたいという気持ちがあるからだと思います。解けると、その何だろうという引っかかりが解消でき、達成感や爽快感が味わえます。そして、クイズはそもそも知識がないとどうしようもないですが、パズルはそうではありません。なんとなくこうかも、という取っかかりがあれば、考えているうちに解けることがあります。最初から全部がわかっていなくても、考えれば答えにたどり着ける、そういうおもしろさが一番の魅力なのだろうと思います。
『関塾タイムス』のパズル制作者である崔 清貴さんに、実際の作り方や作る時に心がけていることなどを伺いました!
ひとつの言葉からつなげていく
キーワードに直接関係する言葉だけではなく、つながる言葉もリストアップします。例えば、2022年12月号の「ウインタースポーツ」をインターネットで調べると、北海道で開催された冬季オリンピックについての記事が出てきます。そこから連想して、北海道の土地や名物などに関係する言葉もリスト化しておきます。
少し難しい言葉も入れる
パズルは考えて解くものです。誰でも知っているような簡単な言葉だけではクイズに近くなってしまい、おもしろいパズルにはならないので、難しめの言葉も入れています。特に『関塾タイムス』では、勉強にもなるよう、パズルを解くことを通して知らない言葉を覚えてもらいたいと思っています。
STEP2
季節の言葉も入れる
キーワードに関する言葉だけで全てのマスを埋めるのは難しいので、他の言葉も使います。『関塾タイムス』は月刊誌なので、掲載号の季節に合わせた言葉を多く入れるようにしています。日本だけではなく、外国の年中行事などを参考にすることもあります。
しりとりのように考える
1つ言葉を入れると、その言葉に含まれる文字が、つながるマスの言葉の1文字目になるので、しりとりのように、最初の文字から次の言葉を考えていきます。なかなか思いつかない時は、五十音順に試していくこともあります。
何度もやり直す
マス目が埋まるにつれて、文字数や使える文字が制限されていくので、最後になればなるほど考えるのが難しくなります。うまくいかない時は、一度入れた言葉を変える必要もあるので、何度も考え直します。クロスワードパズル作りで一番大変な作業です。
STEP3
いろいろな形式にする
問題文(カギ)は、いろいろな形式がある方がおもしろいパズルになります。例えば、英語パズルでは、単に英単語の日本語訳だけではなく、反対の意味の単語を挙げたり、英文の一部を空白にしたりしました。
考えさせる問題にする
単純な言葉でも、少しひねった問題になるようにしています。答えが「赤」だったら、ポストやトマトなど赤を連想させるものを並べたり、フランスとドイツの国旗に共通する色を聞いたり。ひらめいたり考えたりする過程を楽しんでほしいと思っています。
私がパズルを作り始めたのは社会人になってからです。本を読んだり文章を書いたりすることが好きだったので、大学卒業後は本や雑誌を制作する編集プロダクションに就職しました。そこである雑誌のパズルコーナーを担当することになり、パズル作家さんに制作をお願いする仕事をしていました。確認のためにパズルを解いていて、子どもの頃によく解いていたし、好きだったなと思い出したのです。
そのうち、あるパズル作家さんと仲良くなって、試しにちょっと作ってみないか、と提案されました。その方が私のパズル作りの師匠のような存在で、基本的な作り方や気をつけることなどいろいろと教えていただいたのです。それがパズル作家としての始まりでした。その後、独立して、今はフリーランスの編集者、ライター、パズル作家として活動しています。
パズルを作っていて楽しいのは、やはり良いパズルを作れた時です。キーワードにあった言葉をうまく当てはめられたり、おもしろい問題文を考えついたりできると、とても充実感があります。また、作ったパズルを解いてくれた人に、楽しんでもらえたり、新しいことを知ってもらえたりできると、やりがいを感じます。
大変なのは、言葉がなかなか考えつかなかったり、自分があまり詳しくないジャンルで言葉を知らなかったりする時です。『関塾タイムス』のパズルでは、今の子どもたちが学校で習っている内容が、自分の習った内容と変わっていないかも調べるようにしています。
私がパズルを作ったり解いたりしている時に感じるおもしろさや楽しさは、特別なものではなくて、他のことをしている時と同じような感覚です。おいしいものを食べたり、欲しかったものを買ったり、スポーツをしたり、音楽を聞いたり、好きなことをして楽しんでいる時と似ています。だから、それらと同じように、パズルを解くことを単純に楽しんでほしいですね。パズルを通して、わからなかったものがわかるようになることのおもしろさを感じてもらって、勉強する時も同じように、知らないことを知る喜びを感じてもらえたらいいなと思います。
また、パズルを解くのが好きな人は、きっとパズルを作ることも楽しめます。クロスワードパズルを解いている途中、穴あき状態の時に、こんな言葉もあるんじゃないかな? と考えてみて、おもしろいと思ったら、ぜひオリジナルのパズル作りに挑戦してみてくださいね!