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2023年4月号特集② 地方自治の仕組み

  2023年4月には、地方公共団体の選挙が全国で一斉に行われる、統一地方選挙があります。選挙というと、国会議員の選挙が注目されることが多いですが、自分が住んでいる地域の政治を行う代表者を選ぶことも、とても大事なことです。

 地方公共団体の選挙では、地域の問題、実際の暮らしに身近なことに焦点が当たります。地方自治の仕組みや統一地方選挙について詳しく知って、自分たちに身近な問題について考えてみましょう!

地方自治は民主主義の学校

民主主義を学べる場

 地方自治とは、都道府県や市町村ごとにそれぞれの地域の住民が行う政治のことです。地方自治を行う組織を地方公共団体と言います。地域には様々な特徴があり、気候や産業、人口などによって、抱える問題が違います。これらの問題は、住民一人ひとりが考え、協力して解決していく必要があります。そのために行われるのが地方自治で、住民の意見を反映させやすく、人々が政治に直接参加する機会を得ることができます。自分たちのことを自分たちで話し合って決めるという民主主義を、身近な問題から実践して学ぶことができるため、「民主主義の学校」と言われています。

国から地方へ

 地方自治の制度は日本国憲法で保障されています。国に権力が集まることを中央集権、国から地方に権力が分けられることを地方分権と言います。かつての日本では、国の権力が大きく、地方のことも国の主導で決めていました。しかし、国が成長していくにつれて、中央と地方の差が広がり、地方のことは地方で決めるべきだという声が高まりました。そこで、1999年、地方分権を進めるための「地方分権一括法」が定められました。地方分権は、国の政治における三権分立と同じように、ひとつのところに権力が集中するのを避けるための仕組みでもあります。

地方自治の制度と特徴 ~住民が直接参加できる仕組み

国と地方公共団体の違い

 地方公共団体は、首長(都道府県知事・市町村長)と地方議会(都道府県議会・市町村議会)の議員によって構成されています。国の制度では内閣総理大臣を国民が直接選挙で選ぶことはできませんが、地方の制度では首長も議員も住民の直接選挙によって選ばれます。この制度を二元代表制と言い、首長と地方議会は対等な権力を持っており、どちらかが強くなりすぎないようになっています。
 地方議会は、条例の制定や予算の決定などを行います。首長は、条例案や予算案を地方議会に提出したり、新しい取り組みを行ったりします。また、地方議会は首長の方針に反対であれば、不信任の決議ができます。対して、首長は地方議会の決定を拒否したり、地方議会を解散したりする権利を持っています。

▲地方公共団体の選挙権と被選挙権

地方公共団体の財政

 地方公共団体の収入には、それぞれの地域で独自に集める自主財源と、国から受け取る依存財源があります。自主財源は、住民や企業が納める住民税や事業税といった地方税、公共施設の利用料などです。依存財源は、地方交付税交付金国庫支出金などです。地方交付税交付金は、地域の格差を埋めるためのもので、使い方を地方公共団体が自由に決めることができます。対して国庫支出金は、義務教育や公共工事など特定の政策を行うためのもので、使い方が指定されています。
 地方税は、人口や企業の数、産業などの違いによって、収入額に差があります。近年、少子高齢化や都市部への人口の集中などの影響で、税収が減っている地方公共団体が増えていることが問題になっています。日本は、東京都に人口や企業が集中しているため、47都道府県のうち、地方交付税交付金を受けずに自主財源だけで運営できるのは東京都だけです。多くの地方公共団体は、財源不足解消のため、地域経済を活性化しようと様々な取り組みを行っています。

住民の政治参加

 地方自治は、選挙以外にも、住民が政治に参加できる制度があります。自分たちの意見がきちんと反映されているか確かめ、働きかけることができるのです。次の3つの方法があります。

2023年4月に20回目

 統一地方選挙は、その名の通り、期日を統一して全国で一斉に行われる地方公共団体の選挙です。有権者の選挙への意識を全国的に高めること、選挙事務や費用を節減することを目的としています。地方公共団体の首長や議員の任期は4年なので、何らかの理由で途切れた場合を除いて、4年ごとに選挙が行われることになります。
 第2次世界大戦後、日本の新しい地方自治の制度ができ、1947年4月に全地方公共団体で一斉に選挙が行われたのが第1回で、2023年は第20回となります。全国1788団体のうち、981団体で実施される予定です(2023年1月1日総務省発表)。

全体の統一率は約3割

 第1回の統一率(統一地方選挙で実施される選挙の割合)は100%でしたが、回を重ねるにつれ、下がっています。市町村の合併、首長の死亡や辞職、議会の解散などにより、期日がずれる団体が出てきたからです。また、2011年の統一地方選挙では、前月に東日本大震災が発生し、被災地の地方公共団体の選挙が延期されました。以降の統一率は3割以下、第20回も27・43 %です。統一率の低下により、意識の向上や経費の削減といった目的が充分に達成されないことが懸念されています。一方で、個別に行うことでより各団体の特徴に合わせた選挙ができるという意見もあります。
 とはいえ、解散が少ない道府県議会では、今回も8割を超える団体で実施され、候補者が最も多くなる選挙です。候補者の意見を比べて、身近な地域の問題について調べたり、考えたりしてみましょう。

前半が9日、後半が23日

 統一地方選挙は前半と後半の2つの日程に分けて実施されます。前半戦では、知事や道府県議会議員の選挙、政令指定都市の市長選挙と市議会議員選挙が行われます。後半戦では、政令指定都市以外の市区町村長選挙と市区町村議会議員選挙が行われます。2023年は、前半が4月9日、後半が4月23日に実施されます。

統一地方選挙 ~今年は4年に1度の選挙イヤー

今回の注目選挙

 地方選挙は、その地域の住民にしか投票権がないため、出身地や住んでいる地域以外の選挙に関心を持つ人はあまりいません。しかし、全国的な注目を集める地方公共団体の選挙もあります。今回、自分が住む地域では選挙が実施されない人も、これらの選挙に注目してみましょう。

大阪府知事・大阪市長選挙
 大阪では、2011年に当時の橋下徹知事が知事を辞職して大阪市長選に出馬するという異例の選挙が実施されてから、知事選と市長選が同時に行われるW選挙となっています。以来、知事、市長ともに国政政党である日本維新の会に所属する党員が当選し続けています。地方選挙では、政党よりも個人の政策が注目されることが多いですが、大阪の選挙結果は、日本維新の会の今後にも影響を及ぼすと考えられています。

静岡市長選挙
 静岡市は、リニア中央新幹線の問題で注目を集めています。東京・大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線は2027年の開業予定で建設を進めていましたが、未着工の静岡工区の問題で開業が見通せない事態になっています。川勝平太知事は建設に慎重、田辺信宏市長は推進の立場をとっています。田辺市長は次の市長選への不出馬を表明しており、結果により、状況が変わるのではないかと考えられています。

①直接請求権
 住民が直接政治に参加できる、直接民主制を取り入れた制度です。有権者(選挙権のある住民)から必要な数の署名を集めることで、首長や議員の解職、条例の制定や廃止などを求めることができます。

②住民投票
 地方公共団体にとって重要なことを決定する時、投票によって住民全体の意見を明らかにする制度です。法的な拘束力はありませんが、住民投票の結果は政策に大きな影響を与えます。全国各地で行われており、近年で最も規模が大きく、話題となったのは、大阪市で行われた大阪都構想(大阪市をなくし、東京のように区に分割しようという政策)の住民投票です。2015年、2020年の2度実施され、どちらも反対がわずかに上回り、否決となりました。

③請願・陳情
 
議会に書面を提出して、政治についての意見や要望を伝えることです。請願は議員による紹介が必要ですが、陳情は不要です。年齢などの制限はなく、誰でも行うことができ、地方議会だけではなく、国会にも提出できます。