- 特集②
2024年7月3日から紙幣のデザインが新しくなります。 描かれる人物が変わるだけではなく、紙幣では世界初となる最先端技術が取り入れられたり、誰もが使いやすくする工夫がされていたりと、様々な注目ポイントがあります。20年ぶりに一新される紙幣がどんな風に生まれ変わるのか“予習”しておきましょう。
新しいお札の“顔”になるのは、どんな人物なのでしょうか。日本の発展に貢献した3人の功績を知っておきましょう。
新しい紙幣に描かれるのは、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の3人。それぞれ経済、教育、医療の分野で優れた功績を残し、日本の発展に大きく貢献しました。
紙幣の肖像を誰にするかについて特別な決まりはありませんが、おおよその基準は「日本国民が世界に誇れて、教科書に載っているなど一般的によく知られている人物」であること。また、偽造防止の観点から、「なるべく精密な写真や絵画を入手できる人物」が選ばれています。
<一万円札>
日本の資本主義の父
渋沢 栄一 (1840~1931)
紙幣の絵柄やデザインを変えることを「改刷」と言います。日本銀行は、1885(明治18)年に第1号の紙幣を発行してからこれまでに53種類の紙幣を発行していますが、改刷の主な目的は偽造防止です。改刷の度に最新の偽造防止技術を取り入れ、デザインも一新してきました。
今回の改刷で注目されているのが、新たに採用された2つの偽造防止技術と、誰もが使いやすいように工夫されたユニバーサルデザインです。詳しく見ていきましょう。
3Dホログラム……① [後述の「比べてみよう!」図中の番号と対応]
3Dで表現された肖像が回転して見える最先端技術です。下の図のように、見る角度によって肖像の向きが変わります(それ以外の図柄も見る角度によって変化)。
一万円札と五 千円札は【ストライプ型】、千円札は【パッチ型】が使われ、この技術が紙幣に採用されるのは世界初。より偽造されにくい紙幣へと“進化”します。
高精細すき入れ……②
「すき入れ」とは、紙の厚さを部分的に変えることで、紙を透かして見た時に模様や文字などが現れるようにする加工技術のこと。「すかし」とも言います。
周囲より紙が薄い部分は光がたくさん通るため明るく(白く)見え、厚い部分は光が通りにくいため暗く(黒く)見えます。前者を「白すかし」、後者を「黒すかし」と言い、日本の紙幣は2つのすき入れを組み合わせた「白黒すかし」によって濃淡の差を繊細に表現しています。
すき入れは現在の紙幣でも使われていますが、新紙幣では肖像の背景に細かい模様のすかしが加わり、さらに精密で高度なすき入れに変わります。
パッと見てわかる
額面数字を大きく……A
国籍や年齢を問わず、多くの人になじみのあるアラビア数字を大きく表示し、よりわかりやすくしています(表裏とも)。
触ってわかる
識別マークを統一……B
指で触って紙幣の種類を識別できる識別マークを11本の斜線に統一。紙幣ごとに位置を変え、違いがわかるようにしています。
形・位置の違いでわかる
すき入れ・ホログラムの形・配置を変える……C
紙幣ごとに異なる形のすき入れを違う位置に配置し、紙幣の違いをより明確に。3Dホログラムの位置も変えています。
<触るとわかる「深凹版印刷」>
肖像などの主な図柄には、独特のざらつきを出す凹版印刷が使われています。額面の数字や識別マークには、特にインクを高く盛り上げる「深凹版印刷」という技術が使われており、指の感触で紙幣が識別できるようになっています。
実業家。埼玉県出身。明治維新後、日本経済の発展には銀行が必要であると考え、日本初の商業銀行「第一国立銀行」を開業。それを足がかりに500社もの会社の設立に関わったことから「日本の資本主義の父」と呼ばれています。この肖像は、70歳の時に撮影した複数の写真を参考に60歳代前半にリメイクされたもの。
<五千円札>
日本初の女子留学生
津田 梅子 (1864~1929)
女子教育家。女子英学塾(現・津田塾大学)創始者。1871年、6歳の時に日本初の女子留学生として渡米(17歳で帰国)。1900年、女子英学塾を創設。生涯を通じて女性の地位向上と高等教育に尽力。この肖像は、女子英学塾を創設した年齢であり、教育者としてのキャリアが確立した30歳代の写真をもとに描かれました。
<千円札>
日本近代医学の父
北里 柴三郎 (1853~1931)
細菌学者。熊本県出身。1889年、世界で初めて破傷風菌の培養に成功し、破傷風の治療法を確立。ペスト菌を発見したことでも知られます。伝染病研究所、北里研究所を創立し、医学団体や病院の設立などの社会活動も積極的に行いました。紙幣の肖像は学者としての地位が確立した50歳代の写真を参考にしています。