• 特集①

2025年2月号特集 日本・世界の重大ニュース2024

 2024年の日本では、衆議院議員選挙で連立与党の自民・公民党が15年ぶりに過半数を割り込み、政治に大きな動きがありました。少数与党となった自民党の政権運営が注視されています。

 国際社会では、ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとハマスの戦闘、どちらも収束の気配が見えていません。不安定な情勢が続く中、アメリカでトランプ氏が再び大統領に選ばれ、どのような影響を与えるのか注目を集めています。

 時事問題は、起こったことをただ振り返るだけではなく、それがどう影響していくのかを知っておくことが大切です。社会の動きをきちんととらえておきましょう!

*この記事の情報は、2024年12月1日時点のものです。

重大ニュース① どうなる? 日本の政治

自民・公明党が大敗、過半数割れで少数与党へ

 8月、自民党の政治資金に関する問題などによる内閣支持率の低下を受け、岸田文雄首相が退陣を表明。9月27日、過去最多の9人が立候補した総裁選を制した石破茂氏が新総裁となり、10月1日に第102代内閣総理大臣に就任しました。石破首相は、「国民に信を問う」と、就任からわずか8日後の9日に衆議院を解散、10月27日に第50回衆議院議員総選挙が行われることになりました。
 465議席のうち、自民党が獲得したのは191議席、連立与党である公明党の24議席とあわせても215議席で、目標としていた233議席に届かず、2009年の政権交代以来、15年ぶりに過半数を割り込みました。野党の立憲民主党は148議席、国民民主党は28議席を獲得し、大きく票を伸ばしました。日本維新の会も38議席を獲得しています。
 11月11日に内閣総理大臣指名選挙が行われましたが、過半数が必要な1回目の投票では決着がつかず、自民党の石破総裁と立憲民主党の野田佳彦代表の上位2名による決選投票を経て、石破首相が指名されました。決選投票となったのは30年ぶりのことです。少数与党となった自民党は、これまでのように単独で政策を決定できず、野党との協力が欠かせません。石破首相は「他党にも丁寧に意見を聴き、可能なかぎり幅広い合意形成を図る」と述べています。2025年夏には参議院選挙を控えており、どのように政権を運営していくのか、国民の目が注がれています。

▲首相指名選挙に先立ち、会談に臨んだ石破首相(右)と野田代表(左)。 提供:朝日新聞社

重大ニュース② パリオリンピック・パラリンピック開催

2大会ぶりに観客が熱狂

 フランスのパリで、7月26日から8月11日までの17日間、夏季オリンピックが行われました。パリでの開催は100年ぶり、コロナ禍を経て2大会ぶりに観客が戻り、花の都・パリが熱狂に包まれました。
 日本が獲得したメダルは、金20個、銀12個、銅13個の計45個。金メダル数、メダル総数ともに海外で開催された大会では過去最多となりました。中でも、大躍進したフェンシングが大きな話題に。本場フランスで行われた大会で、日本は金2つ、銀1つ、銅2つのメダルを手にし、世界を驚かせました。スケートボードやブレイキン、スポーツクライミングといったアーバンスポーツでの活躍も目立ち、新競技のブレイキンでは、湯浅亜実選手(ダンサー名・AMI)が金メダルに輝きました。
 8月28日に開幕したパラリンピックは、史上最多となる168の国と地域に難民選手団を加えた約4400人が参加。日本は、金14個、銀10個、銅17個の計41個のメダルを獲得しました。

▲フェンシング男子フルーレ団体で金メダルを獲得した日本チーム。 写真:長田洋平/アフロスポーツ

重大ニュース③ 新紙幣発行

20年ぶりの新デザイン

 7月3日、新しいデザインの紙幣が発行されました。新紙幣が発行されるのは、2004年以来、20年ぶりです。お札の顔、肖像は一万円札が渋沢栄一、五千円札が津田梅子、千円札が北里柴三郎となりました。新紙幣の発行はこれまでも約20年ごとに行われており、主な目的は偽造の防止で、3Dホログラムなどの様々な最新技術が使われています。外国人や障害のある人にも使いやすいよう、数字を大きくするなどのユニバーサルデザインも取り入れられています。『関塾タイムス』2024年4月号の特集記事で詳しくまとめているので、ぜひ確認してください。
 コロナ禍以降、急速にキャッシュレス化が進み、広く流通する最後の紙幣になるだろうとも言われています。しかし、日本銀行の植田和男総裁は「現金は、誰でもいつでもどこでも安心して使える決済手段で、今後とも大きな役割を果たしていくと考えられます」と話しました。

重大ニュース④ 日本被団協にノーベル平和賞

核兵器のない世界へ

 10月11日、全国の被爆者らで構成される日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)にノーベル平和賞が贈られることが決まりました。受賞理由は「核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」ことです。日本の平和賞受賞は、「非核三原則」を表明した1974年の佐藤栄作元首相以来、50年ぶりで、2例目です。
 日本被団協は、日本の漁船の乗組員がアメリカの水爆実験で被爆したことをきっかけに、原爆投下から11年後の1956年に結成されました。それから68年間にわたり、国際連合(国連)に代表団を派遣したり、世界各地で写真展を開いたりと、核兵器廃絶を世界に訴える活動を続けてきました。
 ノルウェー・ノーベル平和委員会のフリードネス委員長は、“ヒバクシャ”と日本語の単語を使い、実際に被害にあった個人の体験談などが「核兵器は二度と使ってはならない」という世界的な合意形成に大きく貢献してきたと高く評価しました。また現在、核兵器を脅しとして使うような国もあるとして、「今こそ核兵器とは何なのかを思い起こす意義がある」と強く主張しました。
 被団協代表委員・広島県被団協理事長の箕牧智之氏は涙を流して喜び、「引き続き、核兵器廃絶、恒久平和の実現を世界の皆さんに訴えていきたいです」と話しました。被爆者の高齢化が進む中、若い世代が継承していくことが期待されています。

▲受賞の知らせに涙を流す箕牧理事長(右)と高校生平和大使。 提供:朝日新聞社

重大ニュース⑤ トランプ氏、再び大統領へ

激戦州を制して圧勝

 11月5日に行われたアメリカ大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ前大統領が、民主党のカマラ・ハリス副大統領に勝利しました。もともと民主党の候補者は、現大統領であるジョー・バイデン氏でしたが、高齢であることへの懸念を受けて7月21日に撤退を表明、代わってハリス氏が候補者となる、異例の事態となりました。接戦になるだろうとの予想に反し、ハリス氏の準備不足が目立ち、2016年の初当選時よりも多くの票を集めて激戦州の全てを制したトランプ氏の圧勝でした。
 就任するのは2025年1月ですが、「自国第一主義」のトランプ氏は、関税の追加など、政策の方向転換を一気に進めると表明。「力による平和」も掲げており、ロシアのウクライナ侵攻や、パレスチナ・ガザ地区での戦闘に対して、早期の和平を働きかけようとしています。トランプ政権が国際社会にどのような影響を与えるのか、世界中が注目しています。

▲勝利宣言をするトランプ氏。 写真:ロイター/アフロ
▶演説するハリス氏。

2024年 その他のニュース

終わりの見えない2つの紛争

 2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻は、2年以上が経過した今も収束の気配がありません。8月にはウクライナが国境を越えてロシア領内への攻撃を始めました。11月にはアメリカ国務省が、「北朝鮮の兵士がロシア軍とともにウクライナへの攻撃を始めたことを確認した」と発表し、先の見通しがつかない状況です。
 2023年10月には、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃の報復として、パレスチナ・ガザ地区での戦闘が始まりました。国際社会は当初、テロ行為に対するイスラエルの自衛権の行使だとみなしていましたが、一般人をも巻き込んで攻撃し、子どもも含めた大勢の死者を出しているイスラエルへの非難が高まっていきました。国連の安全保障理事会では、何度も即時停戦の決議案が出たものの、いずれもアメリカの拒否権の行使で採択に至っていません。イスラエルは、周辺のイスラム国、イランやレバノンとも戦闘を行い、戦火は収まるどころか中東全域への広がりを見せています。

能登半島での相次ぐ災害

 1月1日、マグニチュード7.6の能登半島地震が発生しました。石川県輪島市、志賀町で最大震度7の激しい揺れを観測し、気象庁は東日本大震災(2011年3月)以来の大津波警報を発令。462名が亡くなり、2万9千を超える建物が全半壊するなど(11月26日気象庁発表)、大きな被害が出ました。亡くなった人のうち半数以上が、建物の倒壊や津波など直接的な被害ではなく、避難生活による体調の悪化などで災害後に亡くなる災害関連死です。交通の便が悪く主要道路が分断されて支援が遅れたこと、過疎・高齢化が進む地域であることなどが、被害が拡大した要因と言われており、日本社会が抱える問題が改めて浮き彫りになりました。また、9月21日から23日にかけて、被災地を記録的な豪雨が襲いました。復旧の最中、さらなる被害を受け、手厚い支援が求められています。

▲地震で倒壊した輪島市中心部のビル。

日本初の月面着陸

 1月20日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小型月着陸実証機「SLIM」が日本で初めて月面着陸に成功したと発表しました。旧ソ連、アメリカ、中国、インドに続く5か国目で、従来は数~数十km離れていた、着陸目標点からの距離の誤差を10m程度におさえ、世界初となるピンポイント着陸を実現しました。8月に運用を終了しましたが、撮影した月面の画像データなどの解析が続けられています。

▲変形型月面ロボット「SORA-Q」が撮影したSLIMの月面着陸画像。

スウェーデンがNATO加盟

 3月7日、北欧のスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、加盟国は32か国になりました。スウェーデンの加盟により、対ロシアの戦略上重要なバルト海が加盟国で囲まれることになり、NATOの強化につながると見られています。

続く円安と物価上昇

 2022年10月に1ドルが32年ぶりに150円台となって話題になりましたが、2024年4月には34年ぶりに160円台となり、円安が続いています。円安になると、海外からの輸入品が値上がりします。物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、家計に大きな負担となっています。

メキシコ初の女性大統領

 6月、メキシコの大統領選挙で、与党・前メキシコシティー市長のクラウディア・シェインバウム氏が勝利し、10月にメキシコ初の女性大統領に就任しました。「マチスモ」と呼ばれる男性優位主義が根強く残るメキシコでは、2014年に議員候補者の半数を女性に割り当てることが義務化され、女性の政治参加が進められてきました。治安の回復や隣国アメリカとの移民問題などの課題にどう対応していくのか、手腕が問われています。

佐渡島の金山、世界遺産に

 7月27日、国連教育科学文化機関(UNESCO)の世界遺産委員会が、新潟県の「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録を決定しました。日本の世界遺産は、文化遺産21件、自然遺産5件の計26件となりました。世界の鉱山で機械化が進んだ16~17世紀に、伝統的な手工業で、高品質の金を大量に生産していた点が評価されています。

迷走した“ノロノロ台風”

 8月22日に発生した台風10 号は、27日に非常に強い勢力となり、29日に鹿児島県に上陸。九州地方、四国地方をゆっくりと進み、9月1日に東海地方の沖合で熱帯低気圧に変わりました。進路予想が難しく、影響が長く続いたため、西日本から東日本の太平洋側を中心に記録的な大雨となり、複数の観測地点で72時間降水量の観測史上1位の値を更新しました。これまでの台風と異なる動きを見せたのは、地球温暖化による海水温の上昇や偏西風の北上が原因とされ、今後も進行が遅い台風が増えることが懸念されています。

▲台風10号の進路(出典:気象庁)

日本の出生数が70万人を下回るペースで減少

 11月5日、厚生労働省が公表した人口動態統計によると、1月から6月までの上半期に生まれた子どもの数は、32万9998人でした。2023年上半期と比べると、6.3%の減少です。2023年1年間の出生数は、統計を取り始めた1899年以来、最少の72万7288人でしたが、2024年は年間70万人を下回るペースでの減少となっています。国や自治体は様々な少子化対策に取り組んでいますが、功を奏しているとは言えず、根本的な見直しが求められています。

谷川俊太郎さん、亡くなる

 11月13日、日本を代表する詩人であり、絵本や歌詞も手がけた谷川俊太郎さんが、92歳で亡くなりました。詩「生きる」「朝のリレー」や、絵本『スイミー』の訳など、教科書にも掲載され、多くの人に愛される作品を生み出し続けてきました。