2019年9月号 特集①
近代化産業遺産 33のストーリー
まずは33の遺産群のタイトルを紹介します。
図書館に並ぶ本から一冊を選ぶように、気になる項目を探してみましょう。
今回は、3つのストーリーについて紹介します。これらの遺産群が、日本産業の近代化に
どのように関わったのか、当時の風景を思い浮かべながら、物語の舞台を楽しんでください。
皆さんが住む地域の近代化産業遺産を探してみるのも、おもしろいですよ!
※近代化産業遺産の詳しい内容は、経済産業省のホームページを参照してください。
https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/nipponsaikoh/nipponsaikohsangyouisan.html
1610年に発見され、幕府の御用山として、江戸城や増上寺、日光東照宮などの銅瓦にも使用する銅を大量に産出していました。その後、1877年に古河市兵衛が銅山を買収し(現在の古河機械金属)、経営に乗り出します。近代技術を用いた開発により、多くの*鉱床を発見、さまざまな近代的手法を取り入れて、東洋一の生産量を誇るまでに成長させ、明治以降の日本の近代化と産業化に大きく貢献しました。しかし一方では公害問題(足尾鉱毒事件)も浮上します。古河が独自の有害物質除去装置を完成させ、今日でも世界の鉱山で生かされていますが、最終的には生産量の減少もあり、1973年に閉山してしまいます。
幕末の戦災と明治維新による東京遷都により衰退した京都の産業を復興させるため、さまざまな近代化策が取られます。中でも琵琶湖疎水の建設は、京都の町、人々へ恵みの水となりました。琵琶湖疎水とは、琵琶湖の水を京都市内で*1灌漑、給水、舟運、発電などに使えるように切り拓いた水路です。1890年、第一疎水が完成。91年には日本で最初の事業用水力発電所となる蹴上発電所が建設され、舟運のために設けられた*2インクラインに動力が活用されます。その後、電力は製造工場を中心に供給され、95年には、わが国初の路面電車を走らせるなど、紡績や伸銅、機械などの新しい産業を盛んにしました。
日本の経済発展に大きく貢献してきた石炭鉱業。江戸時代から採掘が始まり、開国とともに開発が進みます。九州の筑豊、三池、長崎、本州の宇部は一大炭鉱地域として発展。中でも長崎の高島炭鉱は近代技術を駆使した海底炭田の先駆けとなり、三菱社の岩崎弥太郎が端島(軍艦島)とともに本格的な採掘に乗り出します。端島は海底の地下1000mから良質な石炭を産出し、主に八幡製鉄所で製鉄用原料炭として使用され、日本の重工業分野の近代化を支えました。大正・昭和と時代が変わっても石炭産業の発展は衰えません。高層鉄筋アパートが次々に建設され、外観がどんどん軍艦のようになっていきます。しかし、戦後、石炭から石油へとエネルギーは転換。74年の閉山とともに無人の島になってしまいました。
散策
ルート
軍艦島へは、個人では上陸できません。各船会社が運行する軍艦島上陸ツアーに参加してください。周囲を周遊するツアーもあります。
http://www.gunkanjima-nagasaki.jp/at/(長崎市公式観光サイト)