皆さんの身の周りにはたくさんの不思議が隠れています。「なぜ?」「どうして?」と感じたら、その謎をじっくり解明してみませんか? 謎が解けた先にはきっと思いもよらなかった発見があるはずです。
今回は、これまでの「自然科学観察コンクール」の入賞作品の中から3作品をご紹介。どれも小さな疑問から生まれた研究です。自由研究の参考になる工夫とアイデアがいっぱいですよ。さらに、小学生の時に自由研究で作った発明品で特許を取った神谷明日香さん(高2)のお話もお届けします!
自然科学観察コンクールとは?
小・中学生対象の理科自由研究コンクール(通称;シゼコン)。1960年にスタートし2019年で第60回目。自由研究の発表の場として、動・植物の生態・成長の観察記録、鉱物、地質、天文、気象の観測など自由な研究テーマの作品を受け付けています。第60回の応募作品総数は10851点(小学校の部6669、中学校の部4182)。第61回コンクールの応募期間は2020年7月1日〜10月31日。
※入賞作品の写真は、シゼコン公式サイトより転載
富山県富山大学人間発達科学部附属小学校2年(受賞時)
関島 裕右さん
「水車って何のためにあるのだろう?」――。水車のおもちゃで遊んでいてふと疑問に思ったことが、関島さんが研究を始めたきっかけ。 「となみ水車苑」や「北陸電力エネルギー科学館ワンダー・ラボ」で水力発電の仕組みも学びました。「水車ってすごい! 水車を作って発電したい!」と思い、実験を始めました。
一番速く回る水車の条件を見つける
①羽根の数は何枚がいいか?
木の板の羽根、コルクの胴体、木の棒を軸にした水車に45㎝の高さから水を落とし、特製装置を作って水車が回る速さを調べました。羽根の数を1~4、6、8、12枚と変えて実験。
②羽根の幅は?
コルクを胴体にした水車で羽根の幅を変え、水車が回る速さを比較。コルクの幅を半分に切ったもの、1個、2個つなげたものを用意し、それぞれの水車の羽根をコルクと同じ幅にして実験しました。
③羽根の長さは?
羽根の長さを5、10、15㎝と変えて実験。
④水車の大きさと軽さは?
羽根と胴体の長さの比率を同じにした時、水車が大きい方が速く回るかを確かめました。「胴体の直径10㎝+羽根の長さ5㎝」「胴体20㎝+羽根10㎝」「胴体30㎝+羽根15㎝」と変えて比較。また、水車の大きさを同じにした時、軽い材料を用いた方が速く回るかも実験。軽い方から「*スタイロフォームの胴体とペットボトルの羽根」「コルクの胴体とペットボトルの羽根」「木の胴体と銅板の羽根」で比較しました。
⑤羽根の形は?
平ら、スプーン型(凹・凸)、箱型の羽根で水車が回る速さの違いを比べました。
*発泡プラスチック系の断熱材の1種
「羽根は6枚、幅はコルク1個分、長さは短くし、水車本体は小さく、軽くすればいい」ことがわかりました。羽根の形はスプーン型(凹)が一番速く回ることが判明。これらの結果をもとに、全ての条件を満たした理想の水車「ミラクルくるくる水車」が完成しました!
岐阜県郡上市立郡上東中学校3年(受賞時)
浅谷 俊太郎さん
築60年の中学校のランチルームにとても重くて固いスイッチがありました。でも最近のスイッチは軽くて押しやすくなっています。「なぜスイッチを押すのに必要な力が違うのだろう?」。この疑問が研究の出発点でした。
いろいろなスイッチの力を測定
身近にあるスイッチの調査から始めました。①自宅(部屋、廊下、台所、風呂場など計55個)、②中学校(教室、廊下、職員室、ランチルームなど計31個)、③公民館(研修室やホールなど計23個)、④公共の場所(市役所や市民病院のエレベーターなど)、⑤最新のモデルハウス(リビングルームなど計21個)のスイッチを押す力をばねばかりで測定。それぞれオン・オフを測り、力の単位はニュートン(N)で示します(約100g=1N)。
一番重かったのは中学校のランチルームのスイッチで16.7N。一番軽かったスイッチ(約0.8N)の20倍以上でした。理由は、築60年の中学校なので、スイッチも古いものが使われているためと考えられます。自宅にあるスイッチの用途と押す力の関係を分析すると、全般的に家電は強い力が必要で、リモコンは弱い力でも押せることなどがわかりました。
どんなスイッチが一番使いやすい?
使いやすいスイッチを作る条件を探るため、次の実験を行いました。
「スイッチを押す時の腕の角度によって負担はどう変化するか?」「スイッチの面の長さによって押す力はどう変化するか?」「スイッチの指の当たる面の角度によって押す力はどう変化するか?」。
壁のスイッチを押す時、角度が90度(スイッチに垂直)に近づくほど押す力が少なくなりました。その他の実験結果も検証し、「使いやスイッチ」の条件を、①押す面を大きくする、②オン・オフの力を同じにする、③斜めから押しても軽くなるようにする、④押す面を長くする、⑤押す面の角度を小さくする――の5つにまとめ、この5条件を満たす「使いやスイッチ」を作りました。
熊本県熊本市立白川小学校4年・3年(受賞時)
北村 瑛秀さん・北村 優実さん
おもちゃのコマに張りついていたアリが、コマが止まった後に平気そうに歩き出したのを見て、「アリは目が回らないのかな?」と疑問に思いました。確かめてみようと実験がスタート。
工夫を凝らした自作装置で実験
ストローで作ったカプセルにアリを入れ斜面を転がすという方法で、アリが目を回す(めまいを起こす)状況を作って実験。めまいを起こしているかどうかは、北村さんたちが前年の研究で得た結果をもとに判断。その結果とは、アリに温度の違う3つの“橋”を渡らせると、①普通の温度(28℃)の橋は渡るけれど、②熱い橋(54℃)や③冷たい橋(15℃)は渡らない、というもの。斜面を転がしたアリに、銅線で作った①②③の橋を渡らせて様子を観察しました。①を渡れば「成功」、通常は渡らない②や③の橋を渡ったり橋から落ちたりしたら、アリがめまいを起こしていると判断しました。実験した回転数は、10回、100回、200回、300回。
◦10回転のアリ
橋を間違えたアリは0匹。動きに変化なし。➡めまいは起こしていない。
◦100回転のアリ
動きがややのろい。橋を間違えたアリがいたもののほとんどが成功。
➡少しおかしい。
◦200回転、300回転のアリ
明らかにふらつきあり。橋を間違えたり、足をふみはずし落下したりするアリも。
➡めまいを起こしている状態。
シゼコンHPを活用しよう
https://www.shizecon.net/
「シゼコン」のホームページには、どんな研究と相性がいいかをカンタンに診断してくれる「自由研究・相性診断!」や「自由研究攻略マニュアル」など、テーマ選びや研究の進め方に役に立つヒントがいっぱい! 過去の入賞作品のキーワード検索もできます。
自由研究をきっかけに小学6年と中学2年で特許を取得した明日香さん。そのアイデアはどこからくるのでしょうか? 今までに製作した発明品のことや、将来の夢などについて伺いました。
神谷明日香さんプロフィール
2003年、愛知県生まれ。
2015年(小学6年)「空き缶分別箱」の特許取得。2017年(中学2年)「ペットボトル分別装置」の特許取得。「株式会社やくにたつもの、つくろう」設立。
過去の作品(全て夏休みの自由研究です)
•2013年(小学4年)
「トイレットペーパー 出しすぎ解消スタンド」
•2014年(小学5年)
「空き缶分別箱」
•2015年(小学6年)
「本がたおれない本棚」
•2016年(中学1年)
「ペットボトル分別装置」
――「トイレットペーパー出しすぎ解消スタンド」は、紙の出しすぎを防ぐ装置です。大変だったことや工夫したのは、どんなことですか?
当時、保育園に通っていた弟がトイレットペーパーを上手く切れなくて紙を出しすぎていたんです。それで、紙を引っぱるとちょうどいい長さでストッパーがかかって、それ以上引っぱれなくする仕組みを考えようと思いました。工夫したのは、トイレットペーパーが勢いよく回りすぎないように装置に紙やすりをつけたことです。でも、仕組みを形にする時に上手くできなくて、父と一緒に考えて設計図を作りました。トイレットペーパーの周りの長さを測ったり、紙がちょうどいい長さで止まって切れる仕組みにするために装置の長さを計算したり、いろいろと試しながら設計図を完成させるまでが大変でした。
――この作品は学校で賞を取り、全国区の発明イベントで佳作に選ばれました。確かな評価を得て発明に対する意識が変わりましたか?
「誰かの役に立つものを作る」ことを意識するようになりました。自由研究で何を作るか考えるのは毎年すごく悩むから、困っていることを聞いてそれを解決するものを作ればいいと思うようになりました。
――「空き缶分別箱」は、理科で習った磁石の性質を活用することを思いつき、生まれた作品です。アイデアを形にするのは難しいと思いますが、どういうところが難しかったですか?
磁石を使うことはすぐに思いついたのですが、そこから仕組みを考えるのが難しかったです。いくつか仕組みを考えて試したけれどダメで、次の仕組みがなかなか思いつかず大変でした。思いつかないまま夏休みが終わりかけて焦りました。ただ、仕組みを思いついてから試作を作って成功するまでや、本番を作って完成するまでは早かったです(本番中、失敗が2回あってスムーズではなかったけれど)。
――特許を取って気持ちの変化がありましたか? 周りの人の反応はどうでしたか?
特許が何なのかよくわかっていなかったので、特別何か思ったことはありません。新聞やテレビの取材がたくさん来て、それを見たいろんな人からすごいねと声をかけられたので、初めて「特許を取るってすごいことなんだ」と実感しました。
――発明品を作っていて、どうしても上手くできない時はどのようにされましたか?
「とにかくやってみる」「やればなんとかなる」と思ってやっていました。失敗の原因を見つけ、それを解決する方法を考えて試してみる――これを繰り返しました。
――明日香さんは学業を優先しながら、お父様と会社を設立し社長になられました。活動は小中学生が考えた発明品の商品化の支援などですが、会社として今後こんなことをやっていきたいというビジョンがありますか?
今は特にないですが、小中学生が考えた作品が特許を取ったり商品化されたりするのはとてもおもしろいと思うので、それをたくさん形にできるようにしたいです。
――管理栄養士を目指しているそうですね。この職業を選んだのはなぜですか?
料理やお菓子づくりが好きなので将来はカフェをやりたいと思っています。父に言ったところ、「調理師免許は皆持っているけれど管理栄養士の資格を持っている人は少ない。この資格を持っていたらカフェのオーナーだけでなくフードコーディネーターやいろいろな活動ができるよ」と言われたのがきっかけです。
――関塾生の中には、明日香さんのように「何かを発明したい!」と考えている人も多いと思います。そんな皆さんに発明のおもしろさ、発明品を生み出すひらめきのヒントを教えてください。自由研究のテーマが思い浮かばない人へのアドバイスもお願いします。
自分の頭の中にあるアイデアを形にするために、ものを作り出すことが楽しいです。ひらめきのヒントはよくわかりませんが、いろいろ考えても何も思いつかない時は、遊んだり好きなことをしたりすると、意外と何かひらめくかもしれないですね。テーマが浮かばない時は、誰かに困っていることがないかを聞いて、それを解決するものを考えるのもいいと思います。
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