2024年12月号特集② わたしの部活を紹介します!ユニークなクラブ活動

2024年12月号特集② わたしの部活を紹介します!ユニークなクラブ活動

 仲間と一緒に同じ目標に向かって努力したり、困難を乗り越えて喜びを分かち合ったり……。そうした中で思いやりの心や社会性が育ち、友達がたくさんできる――。部活にはいろいろな利点がありますね。今回は、その中でもちょっとユニークな部活を紹介します。すべてに共通しているのは、部員の皆さんが好きなことにひたむきに打ち込み、部活を通じて多くを学び、成長しているということ。具体的な活動や、部活をしていて楽しいこと、大変なこと、現在の目標などについて教えてもらいました。

熱気球部 北海道上士幌高校(北海道河東郡)

“熱気球の町”に誕生

 上士幌町は、1974年に全国初の熱気球大会が開催された “熱気球の町”。以来、恒例となったこの大会に、上士幌高校の先生と生徒はボランティアとして参加していました。そのうちに生徒たちから“自分たちも熱気球を飛ばしてみたい”という声が。そうして1992年、当時の生徒会執行部を中心に立ち上げた熱気球サークルが、同町から借りた熱気球で第19回大会に参加したのが熱気球部の始まり。1994年に部へ昇格しました。その翌年には、部員が熱気球パイロットの資格試験に合格し “高校生パイロット第1号”が誕生。これまでに多くの生徒パイロット、顧問パイロットが生まれています。

熱気球の魅力を伝えたい!

 「小学校での*1係留体験で、子どもたちが全員乗ることができて笑顔で終われた時は、とても嬉しいです。*2フリーフライトで上空からきれいな景色が見られるのも、この部活ならではの醍醐味ですね。気象条件の関係でしばらく飛べなかった後、久しぶりに飛んだ時の喜びは格別です!」。そう答えてくれたのは、部長の沼山陸斗さん。「熱気球は1人で飛ばすことはできません。部員たちが協力し合い、一致団結している感じも好き。熱気球の大会ではチーム同士の交流もあり、チームグッズを交換するのも楽しいですね」。
 大変なことを訊くと、「熱気球の回収や片付けなどの力仕事です。熱気球の*3球皮、ゴンドラ、バーナーを合わせると200㎏以上にもなります。飛行には1本30㎏以上のシリンダー(燃料タンク)を使うなど重いものを持つことが多く、それが何よりも大変です」と教えてくれました。現在の目標は、「熱気球の立ち上げと回収の時間を縮め、より安全に飛べるように作業を行うこと」だそう。
 モットーは“熱気球の魅力を多くの人に伝えること”。部員と顧問の先生が一丸となり、様々な活動を通じて熱気球の楽しさをPRしています。

*1 ロープで固定した熱気球で行う搭乗体験。
*2 自分たちの熱気球で空を飛ぶこと。
*3 熱気球の風船部分。

掃除部 埼玉県立川口工業高校(埼玉県川口市)

創部は生徒の提案から

 全国でおそらくここにしかない「掃除部」は、掃除愛好会として2007年に発足。前年に赴任してきた顧問の牧之瀬貴子先生が化学室を掃除していた時、数人の生徒が手伝ったことがきっかけなのだそう。「掃除部をやろう」と言い出した生徒たちがなんとか集めた10人で愛好会を立ち上げ、2019年、部に昇格しました。「掃除が好き」「部の雰囲気がいい」と次々に部員が集まり、今では校内屈指の人気部活となっています。
 主な活動は、校内のトイレや廊下の掃除だけでなく校外のごみ拾いや草刈りなど。方法は本格的で、校内の床は清掃業者が使うポリッシャー(円形ブラシが付いた電動の清掃機械)を駆使して隅々まできれいにし、ワックスがけは長期の休みに学校に泊まり込んで行うのだとか。「学校の皆や街の人が“きれいにしてくれてありがとう”と声をかけてくれるのが嬉しい」。部員の皆さんは部活の楽しさについてこう教えてくれました。
 部のモットーは「やってやっていると思うならやめろ! やらせていただいていると思おう」。

「スポGOMI甲子園」全国大会で2度の優勝

 「スポGOMI甲子園」は、全国の高校生がごみ拾いの技を競う大会で、海洋ごみ問題の解決をアピールする目的で2019年に始まりました。競技は3人1組で、制限時間の1時間以内に決められたエリアで拾ったごみの量と質をポイント換算し、順位を決定します。
 「掃除部」は毎年埼玉県大会を勝ち抜き、連続で全国大会に進出している“強豪校”。2020年と2022年には全国優勝を果たしています。第6回目となる「スポGOMI甲子園2024」埼玉県大会には「掃除部」から6チームが出場し、「クリーンLV2」チームが優勝に輝きました。12月に行われる全国大会では3度目の優勝を狙います。

▲「クリーンLV2」チームの3人。

そば部 啓新高校(福井県福井市)

上達していることを実感

 2024年7月、東京で行われた「全国高校生そば打ち選手権大会」で21校26チームの頂点に立ったのは、啓新高校「そば部」Aチームでした。「そば部」Bチームも準優勝を果たし、同校が1・2位を独占。前回大会に引き続き2連覇を達成しました。
 輝かしい実績を誇るそば部ですが、部員のほとんどはそば打ち未経験からのスタート。初めは何をどうしたらいいのかさえわからなかった部員も、“おいしいそばを打てるようになりたい”一心で練習に励みました。「何回もそば打ちをするうちに自分が上達していることを実感でき、それが楽しい」。部員が互いに教え合いながら、「楽しくおいしいそばを打つ」をモットーに腕を磨いています。

そば打ち以外の知識も

 同じ材料で同じようにそばを打っても、同じそばは二度とできません。そば打ちはそれほど奥深いもの。そば部では、おいしいそばを打つことを目標に、食べ物の大切さなどについても考えながら、日々練習に取り組んでいます。
 習得できるのは、そば打ちの技術だけではありません。イベントで出店し、そばを販売することで金銭感覚が身につき、そば打ちの指導で多くの人と触れ合う中で、言葉遣いや礼儀、コミュニケーションの大切さも学んでいます。
 現在の目標は、次の「全国高校生そば打ち選手権大会」で優勝し、3連覇を成し遂げること。最後に「そば部を自由にアピールしてください」とお願いすると、「啓新高校そば部が福井で……いや全国で一番最高な部活だと思います!」という答えが返ってきました。

キムチ部 大阪偕星学園高校(大阪府大阪市)

オリジナルのキムチ作りに挑戦

 「キムチ部」と聞くと、皆でキムチを漬け、試食して意見交換し、よりおいしいキムチ作りに挑戦――こんなイメージが思い浮かびますね。大阪偕星学園高校の「キムチ部」は、和気あいあいと楽しく活動しながらも、作るキムチはオリジナル性あふれる“超本格派”。その実力は「漬物グランプリ2023 学生の部」でグランプリに輝いたことからもわかります。
 部ができたのは2022年。高校がある大阪市生野区にはコリアンタウンがあり、“オリジナルの「偕星キムチ」を作って全国ブランドにしたらおもしろいかも”。そう考えた専務理事の発案でした。しかし部員は全員キムチ作りの素人。当初はYouTubeの動画を参考にしながらいろいろなキムチを作り、コリアンタウンの専門店に持参してはプロの助言を仰ぐ日々でした。
 改良に改良を重ねて完成した「×(かける)キムチ」は、本格派韓国風キムチと日本食のそぼろを“かけ”合わせたもの。「漬物グランプリ」を獲得したことで注目を集め、2023年秋には老舗キムチ専門店とのコラボで商品化もされました。

海外に向けた活動を目標に

 部のモットーは「生徒がみずから考え、みずから動く」。副顧問の藤澤俊郎先生に部活で大変なことを尋ねると、「1年生が、何もできない状態から1人でキムチが作れるようになるまでとても時間がかかること」と教えてくださいました。現在の目標は「漬物グランプリで再び良い結果を出すこと(2024年の「漬物グランプリ」は惜しくも落選)、そして、自前の厨房を作ってオリジナル商品を販売すること」だとか。2024年には、キムチの本場・韓国の大学生が同校を訪問したそうで、「近い将来、海外に向けた活動を実現させたいです」とも。これからも「キムチ部」の活動に注目しましょう!

水族館部 愛媛県立長浜高校(愛媛県大洲市)

閉館した水族館が高校の中に復活

 愛媛県立長浜高校にあるのは全国で唯一の「水族館部」。150種、約2000匹の生き物を飼育するだけでなく、*4校内水族館「長高水族館」を運営し、月に一度の*5一般公開も仕切っています。その活動は単なる部活動の枠を超え、地域の観光施設としての役割も担っています。
 同校の隣にはかつて県内唯一の水族館、長浜水族館がありました。県内外から来館者が訪れましたが、老朽化のため1986年閉館に。再開を望む声が高まる中、奔走したのが重松洋先生(現 水族館部顧問)です。“長浜といえば水族館”――こんな地域の思いを引き継ぎ、特色ある学校づくりにつなげようと1999年、「長高水族館」として復活させたのです。ほどなく設置された「水族館部」は今や同校の“顔”として多くのメディアで取り上げられています。

*4 2024年4月、高校に隣接する大洲市長浜保健センター1・2階に移転。
*5 毎月第3土曜11~15時。予約制(予約は1週間前の8時〜同校公式HPより)。

繁殖や研究にも取り組む

 部員は生き物の世話や採集だけでなく、一般公開時には受付や来館者への対応も行います。飼育担当部員による解説が楽しめるのも同水族館の魅力。部員たちは来館者とコミュニケーションをとったり運営に携わったりする経験を通して、多くのことを学んでいます。「班活動」では、4つの班が様々な活動をしています。
繁殖班……クマノミ、クラゲ、サンゴ、カメなどの繁殖を研究。独自のクマノミの繁殖技術を公開し、クマノミ類の保護につなげる活動も。
イベント班……一般公開日のイベントの企画を考案。ハマチショーなどを通じて生き物が持つ可能性と、生き物とヒトとの絆を来館者に伝えています。
研究班……研究成果は「部活データ」の主な実績を参照。
デザイン班……オリジナル商品の開発や館内の様々なデザインを手掛けています。また、水族館そのものの運営デザインの見直しにも取り組んでいます。

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