食べ盛り、育ち盛りの生徒たちの食を担う学生食堂(学食)が、大きく様変わりしています。カレーライスや麺類などの定番メニューしかなかったのは過去の話。今は皆の好みに合わせ、栄養バランスや見栄えにも気を配ったバラエティ豊かなメニューが並んでいます。生徒たちの体と心の成長を支える“学食の今”を紹介します。
2020年に創立130周年を迎えた上宮学園は男子校から共学になって10年目。中高一貫教育のメリットを活かし効率的な独自の学習指導を実践、きめ細やかな学習プランによって一人ひとりの夢と目標の達成に向け、様々な取り組みを行っています。2019年には新校舎が完成し、2学期から新しい校舎での学校生活がスタートしました。リニューアルした食堂は、約300人が一度に食事をとることができる開放的な空間で、生徒だけでなく先生方からも好評です。人気の食堂について校長の山縣真平先生にお話を伺いました。
――校舎を建て替えるにあたって、どのような食堂を目指されたのでしょうか?
前の校舎にあった食堂は狭く、調理できるメニューは限られていました。温かいものはうどんやラーメンなどの麺類と、あとはお弁当くらい。以前は家からお弁当を持ってくる生徒が多かったのですが、今は共働きのご家庭が増え、お弁当を持参することが難しくなってきています。コンビニエンスストアのお弁当でもお腹は満たせますが、冷たいですし栄養バランスを考えると心配な点がありました。
“お弁当を持ってこられない生徒に、出来たてのおいしいごはんを食べさせてあげたい”――。こんな思いから、新校舎には皆が満足するしっかりした食堂をつくりたいと考えました。
――新しい食堂の特長を教えてください。
一番大きく変わったのは献立です。男子校だった頃は定番のメニューに偏りがちでしたが、共学になったので女子生徒の要望も聞くようにして、アイスクリームやスイーツなどのデザートを取り入れました。
メニューづくりや調理を担当していただいている会社は、もともとケーキ屋さんなので、スイーツはお得意の分野です。昨年は10月のハロウィンのシーズンに合わせて「スイーツフェア」を開催しました。定食を注文するとスイーツがついてくるという企画で、ハロウィン以外にも何度か行ったところ、大好評でした。これからも生徒たちの反応を見ながら、皆が喜んでくれることをいろいろと試したいですね。
――メニューで気をつけられているのはどんなことですか?
単調にならないようにすることと、揚げ物に偏らないようにすることです。いくら若いといっても、揚げ物ばかりでは喜んでくれません。定番メニューに日替わりメニューを組み合わせ、飽きがこないようなメニューを工夫しています。フライドポテトやから揚げ、おにぎり、グリーンサラダ、中華スープ、味噌汁などのサイドメニューも充実しています。
食材は決まった業者から一斉に仕入れるのではなく、学校近くのスーパーからできるだけ新鮮なものを仕入れ、それらの食材を無駄なく使って季節に合わせた料理を提供しています。
――食事を提供するシステムはどのようにしていらっしゃいますか?
生徒たちの昼休憩は12時半からですが、この時間に皆が一斉に並ぶと大混雑になるので、1時限目終了後から休み時間ごとに、自動販売機で食券を買えるようにしています。事前に予約しておくシステムで、人気のメニューは早々に売り切れてしまうこともあります。教員は、授業の関係で11時過ぎから食事ができますが、日替わりランチの食券を買おうとしたら、すでに売り切れ――ということもあります。前の食堂ではありえなかったことです(笑)。
量に関しては、予約の場合だけ“大盛”を選べるようにしています。クラブ活動をしている生徒たちはサイドメニューをよく注文していますね。から揚げとフライドポテトが特に人気で、たくさん用意していてもすぐに売れてしまいます。から揚げとフライドポテトは、混み合わないように、あえて食堂の出口付近で渡すようにしていますが、ここはいつも賑わっています。“お弁当持参派”もサイドメニューをよく買っていますよ。もう少しお腹を満たしたいなぁという時にピッタリのようです。
――新型コロナウイルス感染拡大防止のための取り組みを教えてください。
食堂は約300人が一度に食事できるほどの広さがあり、ランチタイムには大勢の生徒たちで賑わっていました。残念ながら今はコロナウイルス感染拡大防止のため、食堂での食事は中止し、テイクアウトのみにしています。テイクアウトはコロナ対策のために始めたのではなく、それ以前から行っていましたので混乱はなく、切り替えはスムーズでした。今は、食堂に生徒たちが並ぶ時は教職員が見守り、密にならないよう気をつけています。
広々とした空間で座席数がたっぷりあり、食堂として使うだけではもったいないので、自習室やミーティングルームとしても利用できるようにパーテーションで分割できるようになっています。
――内装や食器はどのような点に気をつけていらっしゃいますか?
明るくクリーンな印象になるよう心がけました。自動販売機の色は壁と合わせ、違和感が出ないよう白色系にして統一感をもたせています。
テーブルの大きさは、4人用や6人用などいろいろなタイプがあり、人数に関係なく誰でも利用しやすいようにしています。
食器やトレーにもこだわっています。学校の食堂でよく使われがちな食器とは全く違う、カラフルで見た目にも楽しいものにしました。トレーは、木のぬくもりを感じてほしいとの思いから、一見すると木製に見えるものを採用。滑りにくく軽いという実用性がありながら、料理を引き立たせてくれる色合いのものを選びました。
――生徒さんたちの満足度はいかがですか?
「とても使いやすくて楽しい食堂です」と高い評価をもらっています。唯一心配していたのは、中学生と高校生が一緒に利用するのでトラブルが起きないかということです。高校生がどっと並ぶと、中学生が遠慮してはじき出されるのではないかと……。でも、そんな心配は無用でした。高校生たちは中学生に親切に接しています。おいしい食べ物を前にして皆ニコニコしていますよ。食堂全体が開放的で明るいことが、良い雰囲気づくりに役立っているのだと思います。
卒業生たちの間でも「新しい食堂がすごいらしい」と話題になっているそうです。わざわざ見学に来て「僕の大学の食堂よりいいね」と言ってくれる生徒もいます(笑)。
校舎と共に新しくなった上宮学園の食堂。単に食事をする場所としてだけでなく、生徒同士や先生と生徒がコミュニケーションをとり交流する場として、また学びの空間としてなど、学校生活の様々な場面で活用されています。また以前のように、大勢が集い、憩い、楽しい時間を共有できる日がくるといいですね。
瀧野川女子学園が目指しているのは、好きなことを思いきりやり抜き、社会で活躍貢献できる心と力を身につけること。1926年の創立以来、自分の望む人生を手に入れるための心の成長を導くことを重視しています。2010年からICT化に取り組み最先端の教育を進める一方、健全な心を育むために欠かせない食育にも力を入れています。学園直営の食堂では、栄養バランスを考えつつ見た目も華やかなランチの他、スイーツも大人気! 皆の憩いの場となっています。
ランチは、定番のグランドメニューに加え日替わりメニューを用意。日替わりの1例を挙げると、ハンバーグステーキ、ローストビーフ丼、チーズメンチカツ、ビビン丼、さばの塩焼き……と和洋を取り混ぜた料理が並んでいます。また、週に一度の「麺の日」には上海風焼きそばやタイ風の焼きそば・パッタイが、「パンの日」にはチキンタルタルバーガーやバインミーが登場。バリエーション豊かなメニューに、何を食べようか目移りしてしまいます。
放課後の「カフェメニュー」も充実しています。オムライスや季節のパスタなどの食事をはじめ、パンケーキプレートやパフェ・バナナスプリット、デザートクレープなどが人気。友達とスイーツを食べながらおしゃべりしたり一緒に遊んだり……。リラックスして楽しい時間が過ごせます。
食材には徹底してこだわり、野菜は当日仕入れた国産のものを、お米は特別栽培の低農薬のものを使用しています。加工食品はどこの工場で作られたかがわかるものを選び、なま卵はサルモネラ菌を殺菌処理したものを使用しています。
生徒の「食べたい!」気持ちに応えるため、栄養面だけでなく見た目も重視。様々な色の食材を使い、見て楽しく食べておいしい料理を提供しています。“五味五色”を取り入れつつ、1皿または1食で3大栄養素の炭水化物、たんぱく質、脂質がバランス良くとれるよう工夫しています。
「体験的に学ぶこと」を大切にする教育方針は、食の学びでも活かされています。栄養素の知識など基礎をしっかり理解した上で、現代の食に関する問題点などに触れ、その解決法を考える授業を展開。様々な角度から食の大切さを学んでいきます。
調理実習の授業は、自分で調理して試食し味わうことで、食に対し広く興味を持ってほしいというのが目的。生徒からは、「調理は苦手だったけれど、自分にもできると自信が持てた」「食に興味を持てなかったけれど、授業を受けて食べるものを選ぶ大切さと楽しさを知った」などの声が寄せられ、なかには「食に興味がない学生に食の大切さを教えたい」と家庭科の教員を目指す生徒もいます。さらに、選択制のゼミの授業では、学園の食堂を営む料理長から、飲食店のマネージメントやコンセプトの決定、メニューの考案、試作までを学ぶことができます。創造性と起業家精神を養いながら、将来の仕事につながる実践的な授業を行っています。
2015年度から、中高全学年で「創造性教育」を進めています。体験的・実践的な学びの中から世の中にないサービスやものを創り出し、社会に“新しい価値”を提供できる力を育む教育です。
「女性が望むような人生を手に入れることができる学校を」――創立者のこの思いの通り、自分が思い描く未来を実現へと導いてくれる瀧野川女子学園で、夢を叶える一歩を踏み出しませんか?
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