2011年に発生した東日本大震災から10年が経ちました。この10年の間にも日本は、地震や台風、豪雨、土砂災害など様々な自然災害に見舞われています。災害が起きた時、被害を最小限に抑えるために大切なことは、災害について正しい知識を持ち、いざという時に自分の身を守るための方法を知っておくこと、そして、日頃から充分な“備え”をしておくことです。どんなことにポイントをおいて対策をすればいいのか、具体的にみていきましょう。
日本は自然災害が多い国と言われています。日本の位置や地形、地質、気象などが、地震や台風、豪雨、洪水、津波といった自然災害が起きやすい条件を満たしているからです。
地震大国と呼ばれる日本。それを裏付けるデータを紹介しましょう。内閣府の発表によると、世界で発生したマグニチュード(M)6・0以上の地震の回数1036回(2000~2009年の合計)のうち、日本で発生した地震は212回。全体の20・5%を占めました。世界各地で起きたM6・0以上の地震の5回に1回が日本で発生したことになります。なぜ、こんなに地震が多いのでしょうか?
●海溝型地震と内陸型地震
地球の表面は「プレート」と呼ばれる厚さ100㎞前後の硬い岩盤でできています。十数枚に分かれたプレートが地球の表面を覆い、それぞれが別の方向にゆっくりと動いて、衝突したり、一方がもう一方の下に沈み込んだりしています。その結果、海と陸のプレートの境目で地震(海溝型地震)が起こります。日本列島のまわりには4つのプレート(ユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)の境目があるため、日本は世界でも有数の“地震多発国”となっているのです。一方、地面の下で起こる地震もあります。「内陸型地震」と呼ばれるもので、日本全国にある活断層が動くことで発生します。地下の地層や岩盤に力が加わって割れ、割れた面に沿ってずれができた状態やその割れ目を「断層」と言います。その中で、今後もずれ動く可能性が高い断層が「活断層」で、日本には約2000の活断層があるとされています。
日本は台風が多い国でもあります。気象庁によると、直近の30年間で1年間に平均25・3個の台風が発生、そのうち12個が日本に接近し、3・2個が上陸しています。
台風シーズンのピークは8~10月ですが、この時期に台風が多いのには理由があります。夏から秋にかけて熱帯域から北上してくる台風は、日本が位置する北半球の中緯度付近にくると上空の強い偏西風に乗り、速い速度で日本へ向かってきます。特に9月は南から円を描くようにして日本付近を通過するようになります。この時、秋雨前線が停滞していると、台風によって前線が刺激され、猛烈な雨が降ることがあります。秋雨前線は同じ場所にとどまる性質があるため、同じところで雨が長時間降り続き、記録的な豪雨や河川の増水・氾濫などが起こりやすくなります。
梅雨前線が活発になる6~7月頃も大雨に注意が必要です。2020年7月には、九州や中部地方などで集中豪雨が発生、河川の氾濫が相次ぎ、土砂災害や浸水など大きな被害が出ました(令和2年7月豪雨)。
日本では、いつ、どんな自然災害が起きても不思議ではないという意識を持ち、普段から災害への備えをしておきましょう。
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災害は、いつどこで起こるか予測できません。いざという時に慌てないために、普段から準備をしておくことが大切です。家族で相談して「非常持ち出し品」を用意したり、地域にどんな災害リスクがあるか調べたりしておきましょう。
●非常持ち出し品を用意
家族全員分用意しましょう。リュックなどにまとめ、いつでも持ち出せる場所に。避難先で過ごさなければならない場合を考え、普段愛用しているものや、手元にあると安心するものがあるといいでしょう。
●緊急連絡表を作成
家族の情報(連絡先、生年月日、血液型など)をまとめ、コピーして家族全員が持つようにしましょう。家族で決めた集合場所(例:〇〇公園の噴水付近)や、親戚の連絡先など必要な情報を記入します。
●ハザードマップを活用
ハザードマップとは、ある地域で地震や台風などの災害が起きた時、どこにどのような危険があるかをまとめた地図のこと。
国土交通省のハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)では、自分が住んでいる地域の災害リスクを、津波・土砂災害・洪水・火山・高潮など種類別に知ることができます。住んでいる場所にどんな危険があるか調べておきましょう。
●避難場所・避難ルートを確認
自宅近くの指定避難所を確認しておきましょう。実際に避難所まで歩いてみて危険な場所がないか確かめておいてください。
地震や台風などの自然災害だけでなく、火災のように日常生活で起こりうる災害もあります。災害が起きた時、どのように行動すればいいか、正しい対応策を身につけておきましょう!
地震が起きた時の対応策は、自宅にいる時、屋外にいる時など場所によって異なります。どこにいても適切な行動がとれるようにしておきましょう。
自宅では
◦突然の揺れから身を守る
家具の移動や落下物から身を守るため、頭を保護しながら大きな家具から離れ、丈夫な机やテーブルの下にもぐり、脚をしっかりつかみます。
◦火の始末は慎重に
料理や暖房などで火を使っている場合、その場で火を消せるなら消しましょう。火元から離れている場合は無理に火を消しに行かず、揺れがおさまってからに。使用中の電気器具はプラグを抜き、ブレーカーを落としましょう。
◦慌てて外へ飛び出さない
屋根瓦や割れた窓ガラスなどが落ちていたり、看板などが落下してきたりする可能性があり、非常に危険です。
◦扉を開けて避難路を確保
地震で建物がゆがみ、扉が開かなくなることがあります。扉や窓を大きく開け、避難路を確保しましょう。
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人が大勢いる施設などでは
慌てず、その場にいる係員や従業員の指示に従いましょう。頭を保護し安全な姿勢をとり、吊り下がっている照明などがあれば、その下からすばやく退避します。
スーパーマーケットやコンビニでは
なるべく棚から離れ、買い物かごをかぶって身を守ります。
エレベーターの中では
全ての階のボタンを押し、止まった階ですぐに降りてください。
電車やバスの中では
つり革や手すりにしっかりつかまりましょう。
地下街では
停電でまっ暗になってもパニックにならないように。非常灯がつくまで慌てずに待ちましょう。
屋外では
ブロック塀の倒壊や自動販売機の転倒などに注意しながら、これらのそばから離れ、できるだけ広い道路や広い場所に移動しましょう。また、ビルの壁、看板、割れた窓ガラスの落下などに注意し、建物から離れてください。
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山やがけ付近では
落石やがけ崩れに注意し、安全な場所に移動します。
海岸付近や川沿いでは
ただちに高台に避難しましょう。
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台風が来る前に
◦雨戸やシャッターを閉めます。
◦風で飛ばされそうなものは固定するか、家の中にしまいます。
◦断水に備えて浴槽や容器に水をためておきましょう。
◦停電に備えて懐中電灯や携帯ラジオの用意を。
台風の通過後
◦増水した川や水路には近づかない。
◦倒れた電柱や垂れ下がった電線には近寄らない。
大雨の中を避難する時は
◦道路が水浸しになって底が見通せない時は、どんな危険が潜んでいるかわかりません。長い棒や傘などを杖の代わりにして安全を確認しながら進みましょう。
◦長靴ではなく履き慣れた運動靴で。長靴は中に水が入って歩けなくなります。運動靴は、紐があると何かに引っかかって転ぶ危険性があるので、紐がないタイプがおすすめです。
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非常ベルが鳴ったら
避難が最優先。一刻も早く避難を!
煙が充満していたら
低い姿勢をとり、ハンカチやタオルなどで鼻と口をおさえ、できるだけ煙を吸い込まないようにして逃げましょう。ハンカチやタオルがなければ服のそでなどでおさえてください。
いろいろな災害が起こる中で、自分の身を守り生きのびるために重要なことは、正しい防災知識を持ち、いざという時にすばやく行動できるようにしておくことです。各地の防災センターでは、地震の揺れや都市型水害、浸水を疑似体験できたり、火災の初期消火や煙が充満した中での避難訓練ができたりなど災害のこわさと災害時の対応策を身をもって学ぶことができます。こうした施設は全国にありますので、近くの施設を訪れてみるといいですね。
防災についての知識を持っているかどうかは、実際に災害が起きた時、生死を分けることにつながります。防災意識を高めて自分の命を守るサバイバル術を身につけましょう!
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