2018年4月号 特集①
びっくり動物★知識
動物たちの愛と知恵と絆の物語
たくましく生き抜く動物たち
この地球上には、私たちヒトを含め、実に多様な生き物が暮らしています。その姿はもちろん、生息環境、食べ物、群れの性質など、種類ごとに異なっています。
今回は、そんな動物たちについての特集です。弱肉強食の世界に身を置く動物、移動を繰り ヒトと共生する知恵を身につけた動物、それぞれが家族を思い、仲間と助け合い、命をつなげていることを学びましょう。次に動物園を訪れた時、野生の姿を知っていることで見方が変わることでしょう。皆さんとペットとの絆も、もっと深まるかもしれませんね。
子どもを守る「クレイシュ」
動物たちの世界にも、保育園があることを知っていますか?フランス語の「クレイシュ」には、保育所という意味があります。そのクレイシュを形成して、群れのみんなで子どもを守り育てている動物がいるのです。
「百獣の王」といわれるライオンですが、自然での姿を追っていると、いろいろな苦難を乗り越え、生き抜いていることがわかります。何日も、時には何週間も狩りが成功せずに、空腹状態を耐える状況も珍しくありません。そんなライオンにとって、子育てもまた危険が伴います。ライオンといえども子どもは弱い立場。ジャッカルやハイエナ、ハゲワシ、ヘビなどに捕食されてしまうこともあるのです。
また、大人の雄から命を狙われることもあります。ライオンは通常、リーダーの雄と複数の雌、その子どもたちで「プライド」という群れをつくり生活します。そして、子ライオンのうち、雄は大きくなると群れを出なければなりません。独り立ちをした彼らは、新たな群れを求め、他の群れを襲ったり、雌だけの群れを見つけて仲間になったりします。その中で、子どもが邪魔になることがあるのです。
そうした様々な危険から子どもたちを守るため、雌たちはクレイシュを形成します。同じ群れの雌同士は、互いの子どもをまとめて世話しているのです。
ライオンの他にも、クレイシュを形成する動物がいます。中でも、ペンギンのクレイシュはよく知られています。皆さんも、図鑑やテレビなどで見たことがあるのではないでしょうか。例えば、南極で子育てをするアデリーペンギンは、卵から孵って3週間ほどすると、親たちがエサを探して巣を離れます。すると、ヒナたちも巣を出て行き、ヒナ同士で固まってクレイシュをつくります。最初のうちは、巣に戻って親からエサをもらいますが、そのうち巣の外でエサの受け渡しが行われるようになり、やがて独り立ちの時を迎えます。鳥類の中には、クレイシュを形成する種類がたくさんいるそうですよ。群れが協力して子どもを守り育てる姿に、仲間同士の強い絆を感じますね。
ペンギンは、親がエサを探しに行っている間、ヒナ同士が固まって身を守ります。
声で仲間と連絡を取り合う
シジュウカラをはじめ、鳥類の多くが音声でコミュニケーションを取っています。仲間に鳴き声で危険を知らせるカラスの行動は、よく知られていすね。これを利用したカラス撃退グッズなどの開発も行われています。また、2012年には、慶應義塾大学が「カラスは声と姿を結びつけ、それぞれの仲間を認識している」ことを発見しました。私たちの想像以上に、鳥たちは“会話”をしているのですね。
ヒトに近い霊長類たちも、音声で情報伝達をしています。京都大学は、屋久島(鹿児島県)で、ニホンザルたちが「クー・コール」という方法で鳴き交わしていることを発見しました。ある個体が「クー」と鳴くと、別の個体が「クー」といって返事をします。その間隔や抑揚にもルールがあるというのです。こうやって鳴き交わすことで、何かを伝え合っていると考えられています。
海に暮らす生き物では、イルカやクジラ、シャチなどが、高度な音声コミュニケーションを身につけていることが知られています。シャチは群れごとに方言があることもわかっているのですよ。方言は親から子へと受け継がれていきます。他にも、超音波を発して、その反響によって周囲の環境を把握するコウモリも、音声コミュニケーションの使い手です。母コウモリが子どもに対して特別な声(母親語)で語りかけ、それに子どもも応じているといったこともわかっています。
ヒト社会の中で生きるイヌたち
イヌを飼った経験がある人なら、ひょっとすると当たり前のことかもしれません。
先史時代からヒトと共に生きてきたイヌたちは、私たちの社会にすっかり溶け込んでいます。彼らは、巧みな“演技”によって、コミュニケーションをはかることができます。元気よく吠えたり、唸ってみたり、「クーン」としょんぼりした声で鳴いたりと、声だけでも十分に豊かです。目を輝かせたり、悲しそうにうつむいてみたり、飼い主の機嫌を伺うように上目づかいをしたり、しっぽを振ったり、飛び跳ねてみたり……と、あげだすときりがありませんね。
そんな彼ら、”嘘つき”の演技もできてしまうことを知っているでしょうか。イヌは、しばしば飼い主が呼びかけても聞こえないフリをすることがあります。いくら呼んでもこちらを向かないのに、「散歩に行くよ」と言った途端に飛び起きたという経験はありませんか?仮病を使うこともあるんです。以前に何か病気をして、その時に優しくしてもらった記憶がある場合、具合の悪いフリをすれば構ってもらえると学習するんですよ。とても賢いですね。飼い主にはすぐに嘘だとわかってしまう「迷演技」が多いところも、愛嬌があって癒されます。さて、ここまでいろいろな動物のことを紹介してきました。気になる動物のこと、もっと調べてみてくださいね!