2018年4月号 特集②
これからの子どもたちに求められる力とは
学習指導要領は、国の法律に基づいて定められます。10年に一度の改訂は、社会情勢の変化などを受け、子どもたちが抱える課題に対応するために必要なことなのです。小学校の場合は、最近では2016年度に学習指導要領の改訂が行われました。全面実施は2020年度からとなります。
従来の大学入試センター試験を見直す大学入試改革に代表されるように、2020年度以降、評価される学力が大きく変わります。それは小中学校においても同様です。
これまでは、学校にもよりますが、おおむね「どれだけ知識が身についているか」や「早く正確に計算できるか」といった知識面が問われてきました。
しかし、新学習指導要領では、「生徒自らが課題を発見し、身につけた知識や技能を組み合わせ、解決に導くこと」が指導の目標になっています。また、課題を解決するために、他の人と協力し合ったり、積極的に前向きに取り組んだりする姿勢も求められます。このような流れを、皆さんも知っておくといいでしょう。
新学習指導要領の移行措置
新学習指導要領の全面実施前の2年間は移行措置の期間です。この期間に一部を先取りして実施されるのが英語教育です。新学習指導要領では、まず小学3・4年生に「外国語活動」が登場します。また、小学5・6年生ではこれまで「外国語活動」として教科外の扱いだった英語が、「外国語」として教科化されます。各学年で学ぶことが増えるため、学校での準備期間が必要です。移行措置はそのためのものです。
また、単元や項目によって、学ぶ時期が変わってしまうものもあります。そこで、
学習内容の不足や重複を避けなければなりません。算数では「速さ」の単元が6年生から5年生へ移ります。また、国語では学年ごとに習う漢字の配当が変わります。これらの内容を移行措置によって調整し、新学習指導要領にスムーズに切り替われるようにします。
道徳の教科化
今回の改訂では、教科化というキーワードが注目を集めています。教科化するのは「外国語」(英語)と「特別の教科である道徳」です。特に道徳は2018年度からスタートするのでニュースなどでも話題になっていますね。
道徳の時間は、これまでは教科外の活動とされてきたため、皆さんの通知表には評価がつきませんでした。また、道徳の時間を、学級会や遅れた教科の補習にあてている学校も少なくなかったはずです。
教科化されると、これまで採用されていた副読本ではなく、文部科学省の検定を受けた教科書を使い、おおよそ週に1回の授業を行うことになります。また、数値による評価は行われないものの、通知表には先生からの文章による評価が加わります。教科書の題材を参考に、いろいろなことを話し合ったり、自分の考えを深めていったりする力を身につけていきましょう。
英語は小学3年生から
これまでは、小学5・6年生において、週に1回「外国語活動」が実施されてきました。年間35コマが割り当てられています。
この「外国語活動」が小学3・4年生に移ります。そして、小学5・6年生は、新たに教科化された「外国語」の授業を受けることとなります。これが今回の改訂で最も大きな変化と言えるでしょう。
「外国語活動」は、現在の小学5・6年で行われているのと同様、年間35コマが設定されています。先行実施では年間15コマです。授業の内容は、英語の音声やリズムに慣れ親しんでもらうことを目的としています。英語という言語の面白さ、表現の豊かさなどに気付く学習をします。
先行実施における「外国語」の授業は年間50コマです。2020年の全面実施後、教科化されると年間70コマとなり、数値での評価も加わります。授業では、英語の4つの技能「聞く」「話す」「読む」「書く」をバランスよく学び、中学校の英語学習とのつながりを意識した指導も行われます。
2020年度からは、いずれの学年でも英語の時間が2018年度以前より年間35コマ増えることになります。これを実施しようとすると、なかなか大変です。そこで、新学習指導要領では、10~15分程度の短い時間を授業時間にカウントしたり、夏休みや冬休みに授業を行ったりしてもよいということが明記されています。1コマ45分の授業を60分に延期する学校も出てくることでしょう。そうした変化があることを知っておきましょう。何より、英語の時間を楽しく過ごすことが一番ですね。
勉強は基礎が大切
大きく変わる小学校での学び。英語や道徳の教科化については、特に不安に思っている人も少なくないでしょう。
まずは日々の授業をしっかりと聞くことが大切です。教科書をよく読み、わからないところがあれば担任の先生に質問しましょう。たくさんの表現を学ぶことになる英語については、関塾の先生と一緒
に予習・復習するといいですね。英語は中学・高校でも引き続き学びます。小学生のうちに、言語を学ぶ楽しさを知っておくと、今後の学習にも意欲的になれそうですね。わからないところを放っておくことだけは避けましょう。
道徳の授業では、相手の意見を受け止めた上で、自分の考えを発信する力が問われます。みんなの前で話したり、自分の考えをわかりやすく伝えたりすることが苦手な人もいるかもしれません。そんな人は、家族や友達と一緒に、テレビを見たり音楽を聴いたりしながら、思ったことなどを伝え合ってみましょう。また、博物館や美術館、動物園などいろいろな場所へ出かけて行って、自分なりの感想や意見をまとめてみるのもいいですね。1枚の絵から受ける印象が人によって異なることを知ると、多様な考え方の面白さに気付けるかもしれません。こうした経験は、授業で発言する勇気にもつながるはずですよ。
「求められる力」を育てる
『関塾タイムス』3月号の「関塾ひろば」では、「協同問題解決能力調査」について紹介しました。世界の国々が参加するテストでも、誰かと課題を共有し、解決のために必要な知識やスキルを出し合って、前向きに取り組む力を試されます。他にも、東京都立の高等学校が実施する推薦入試での集団討論(グループ討論)など、この先、話し合ったり、自分の意見をまとめたりする力が求められる場面が出てきます。道徳の時間には、いじめ問題への対応の充実などの “ねらい”が設定されていますが、その“ねらい”を探ろうとするのではなく、題材を素直に受け止めて、自分なりの考えを発信できるようになれるといいですね。道徳も英語も、これから先、社会人になってからも役立つスキルです。積極的に学ぶ姿勢を身につけましょう。