2020年1月号 特集②
セルフチェックで風邪予防
下の表で、当てはまる項目がいくつもあったら要注意です!できることから生活習慣を見直して、風邪やインフルエンザに負けない体づくりを心がけてください。
風邪にかかりにくい生活習慣とは、どのようなものでしょうか。具体的にみていきましょう。
風邪対策①手洗いを徹底しよう
風邪の原因の9割はウイルス感染です。ウイルスに感染する経路には、大きく分けて「接触感染」と「飛沫感染」があり、こまめに手洗いをすることは、接触感染を防ぐのに効果的です。
例えば学校生活では、風邪をひいている人と消しゴムの貸し借りをするだけで接触感染する可能性があります。風邪をひいた人が使った消しゴムにウイルスが付着していると、それを借りた人の手にウイルスがうつり、感染する恐れがあるのです。
この他にも、階段の手すりやエレベーターのボタン、水道の蛇口、ドアのノブ、共用のパソコン、電車のつり革など、私たちの周りには不特定多数の人が触れるものがたくさんあります。これらに全く触らないでいることは難しいですね。ですから、気付かないうちにウイルスが手についたとしても、体内に侵入する前に洗い流してしまえば、感染には至りません。こまめな手洗いが推奨される理由は、ここにあります。
帰宅した時や食事の前はもちろん、学校や塾では授業が終わる度に手を洗う習慣をつけましょう。流水と石けんで、指と指の間や指の付け根、手首までていねいに洗ってください。最後は、清潔なタオルなどで水分をよく拭き取りましょう。
風邪対策②うがいを習慣づけよう
風邪やインフルエンザに感染した人が咳やくしゃみをすると、飛沫に含まれるウイルスが空気中に飛び散ります。これを吸い込むことによって感染するのが、「飛沫感染」です。
感染者から吐き出されたウイルスは、空気中に浮遊し、私たちの鼻や口から体内に侵入する機会をうかがっています。ウイルスなどの異物が体内に侵入した時、異物をとらえ排除しようと働くのは、のどの粘膜です。しかし、のどが乾燥していると、この働きが鈍り、ウイルスがのどの粘膜に付着しやすくなります。そこで実行したいのが、うがいです。定期的にうがいをして常にのどをうるおしておくと、のどの粘膜を保護することができ、風邪予防につながるというわけです。
うがいをする頻度は、「2時間ごと」、「トイレのあとに手洗いとセットで」など、自分で決めて習慣にしましょう。
風邪対策③睡眠を十分とる
受験を控えた皆さんは、勉強する時間を少しでも確保したいと思っていますよね。毎日夜遅くまで起きていて睡眠不足気味ではありませんか?
睡眠不足が続くと、免疫力が低下し、風邪をひきやすくなります。勉強をがんばることはもちろん大事ですが、体調をこわしてしまったら何にもなりません。生活リズムを整え、睡眠・休養をしっかりとって、疲れをためないようにしましょう。
質のいい睡眠を得るためには、寝る直前にパソコンやスマートフォンを見ることは控えましょう。パソコンやスマートフォンの画面から発せられるブルーライトは、脳に刺激を与え、脳を興奮状態にしてしまいます。快適な眠りを妨げる原因になりますので、寝室にはこれらのデジタル機器を持ち込まないように心がけてください。
風邪対策④ストレスをためない
ストレスが多すぎても、やはり免疫力が低下します。受験が近づき、1日中机に向かっているという人も多いでしょう。これが何日も続くと、ストレスはたまる一方。時には頭を休めて、適度に気分転換をすることが大切です。
趣味を楽しんだり、散歩やストレッチをしたりするのもいいですね。
軽く体を動かすことは、ストレス発散に役立つだけでなく、継続することで免疫力アップの効果も期待できます。勉強と息抜きのメリハリをつけ、自分流の“リフレッシュ法”を見つけて、ストレスをためないようにしましょう。
風邪対策⑤栄養バランスの良い食生活を
風邪に負けない体づくりに重要なのが、毎日の食生活です。栄養バランスの良い食事をすることが基本ですが、風邪対策に特に積極的にとりたいのが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。これらのビタミンは、ウイルスなどの外敵から体を守る働きをする免疫細胞が弱まるのを防ぎ、風邪に対する抵抗力を強くしてくれます。また、ビタミンAには、のどや鼻の粘膜の保護機能を高める働きもあります。
ビタミンAは、ウナギやレバー、ニンジン、ビタミンCはピーマンやブロッコリー、果物、ビタミンEは鮭、カボチャ、ナッツ類などに多く含まれています。これらの食材をうまく取り入れて、1日3食、規則正しい食生活を心がけましょう。
風邪対策⑥十分な水分補給を
冬は湿度が低下し、乾燥しやすい季節ですが、暖房がきいた室内では、湿度はさらに低下します。そんな部屋に長時間いると、体からかなりの水分が失われます。「風邪対策❷」でも述べたように、乾燥によってのどのうるおいが足りなくなると、風邪ウイルスが体内に侵入しやすくなります。定期的にうがいをするとともに、水分を十分とり、乾燥を防ぐことが大切です。寝ている時や、朝、起きた時に、のどをうるおせるように、枕元に水やお茶を置いておくのもおすすめです。
風邪対策⑦湿度を50~60%に保つ
部屋が乾燥していると、体から水分が失われるだけではありません。乾燥した室内では、ウイルスが空気中を漂ただよう時間が長くなり、それだけ風邪やインフルエンザに感染するリスクが高まります。
空気中に放出された風邪やインフルエンザのウイルスは、湿度20%の乾燥した環境の中では6時間たっても約90%が生存し続けますが、湿度が60%になると10%以下に減少すると言われています。
部屋にはできるだけ加湿器を置き、湿度を50~60%に保つようにしましょう。ぬらしたタオルを室内にかけておくだけでも、乾燥を防ぐことができます。ウイルスを排除するには、こまめに換気をし、空気を入れ替えることも重要です。
紹介した以外の風邪対策としては、できるだけ人混みを避ける、風邪をひいている人の近くに長くいない、などがあります。
マスクを使うことも忘れないでください。マスクの着用でウイルスを完全にシャットアウトすることはできませんが、ウイルスに感染する危険性を減らしたり、のどや鼻の粘膜を冷えや乾燥から守ったりすることは可能です。マスクの内側に、湿らせたガーゼをあてるとさらに効果的です。
しかし、どれだけ気をつけていても風邪をひいてしまうことがあります。そんな時は、感染を広めないよう、マスクを着用するなどの対策をしっかりとり、周りの人への配慮を忘れないようにしましょう。
インフルエンザが毎年流行するのはなぜ?
私たちの体には、ウイルスなどの外敵から身を守る「免疫」というシステムが備わっています。免疫システムの最前線で働く免疫細胞は、ウイルスが体内に侵入すると、そのウイルスの姿形を覚え、次に同じウイルスが侵入してきた時には、そのウイルスを排除してくれます。ですから、一度でもインフルエンザウイルスに感染したことがあれば、免疫システムが働いて、二度と感染しないはずです。それなのに、毎年流行を繰り返すのは、なぜでしょうか?
それは、インフルエンザウイルスが、“変異する”性質を持っているからです。インフルエンザウイルスは、自分の姿形を少しずつ変えることができるのです。変異したウイルスが体内に侵入すると、免疫細胞はそれを新しいウイルスだと認識してしまい、排除することができずに感染を許してしまいます。インフルエンザウイルスは、毎年のように変異を繰り返すことで免疫システムの目をかいくぐり、流行を引き起こしているのです。
インフルエンザにはワクチン接種が有効
インフルエンザの症状は、38℃以上の発熱、関節痛・筋肉痛、頭痛、鼻水、のどの痛み、倦怠感、咳などです。高齢者や小さい子どもなど抵抗力が弱い人が感染すると、合併症を起こして重症化することがあります。
予防対策として重要なのが、ワクチン接種です。ワクチンを接種すると、インフルエンザの発症率を50~60%も減少させることができます。もし発症してしまっても、重症化するのを防ぐ効果がありますので、受験生の皆さんは早めに接種しておきましょう。
ワクチンを接種すると、約2週間後から、ウイルスを攻撃する「抗体」が血液中に増え始め、1~2か月後にピークになります。日本でインフルエンザが流行するのは例年1~2月頃ですから、できれば12月中旬までに接種しておくといいでしょう。家庭内での感染を防ぐためには、家族全員がワクチン接種をしておくことが望ましいですね。