次の大統領はバイデン氏かトランプ氏か――? 4年に一度のアメリカ大統領選の一般投票日(11月3日)が近づいてきました。アメリカ大統領選の結果は各国への影響力が大きいだけに、選挙の動向に世界中の注目が集まっています。
そこで改めて、大統領が選ばれるまでの流れをおさらいしておきましょう。日本の選挙制度や各国の選挙についても紹介しています。
※米大統領選の情報は2020年8月15日時点のものです。
アメリカ大統領選挙は4年に一度、オリンピックと同じ年に行われます(今年は東京オリンピックが延期されたため、同年開催とはなりません)。一般投票日は「11月の第1月曜の翌日」と定められており、今回は11月3日が決戦の日になります。
選挙戦を争うのは、再選を目指すドナルド・トランプ氏(共和党)と、前副大統領のジョー・バイデン氏(民主党)。現職で、過激な言動が度々物議を醸すトランプ氏と、*1穏健派のバイデン氏がどのような戦いを繰り広げるのか、最後まで目が離せません。
アメリカ大統領選挙はマラソンレースにたとえられるほど、“ゴール”までには長い道のりが待っています。大統領になりたい人が立候補してから大統領が決定するまでは、約10か月もの長期戦。その過程で勝てる見込みがない候補者は次々と撤退していきます。前半戦で勝利をおさめなければ、本選挙が行われる後半戦にコマを進めることすらできません。
*1様々な問題を強硬手段を用いず、穏やかに解決しようとする立場の人。
前半戦 党員集会や予備選挙によって党の候補者を絞り込む
アメリカには共和党と民主党という2つの大きな政党があります。大統領選は、この2大政党から党の代表として誰が一番ふさわしいかを選出することから始まります。それぞれの党を代表する候補者は、夏に開かれる全国党大会(以下、党大会)で正式に指名されますが、党大会で候補者を選ぶのは各州の代議員たち。この代議員を決めるプロセスが、「党員集会」と「予備選挙」です。
党員集会は党員が議論をしながら代議員を決める方法、予備選挙は有権者が選挙で代議員を決める方法です。こうして選ばれた代議員が党大会で投票し、党の大統領候補を正式に決定します。
今回は2月3日、中西部のアイオワ州で全米最初の党員集会が開かれ、大統領選の火ぶたが切って落とされました。3月3日の「スーパーチューズデー」(コラム参照)には予備選挙や党員集会が一斉に行われ、選挙戦最初のヤマ場を迎えました。
こうして各党の候補者を1人に絞り込むまでが、大統領選の前半戦です。
後半戦 いよいよ本選挙。538人の選挙人を奪い合う!
各党の候補者が決まったら、いよいよ候補者同士が激突する本選挙への戦いが幕を開けます。11月3日の「一般投票(本選挙)」で有権者は事実上、大統領を選びますが、形式的には「選挙人」をどれだけ獲得できるかという争奪戦になります。
選挙人とは大統領を直接選出する人のことで、あらかじめどちらの候補者を支持するかを明らかにしています。各州に割り当てられている選挙人の人数は人口によって決まっており、例えば人口が一番多いカリフォルニア州は55人、最も少ないワイオミング州は3人となっています。
一般投票は州ごとに行われ、1票でも多くの票を集めた候補者がその州の選挙人を全て獲得できる「勝者総取り方式」を採用しています。サウスカロライナ州(選挙人の割り当ては9人)を例にとると、もしトランプ氏の得票数の方が多ければ、トランプ氏が9人の選挙人を全て獲得できるというわけです。ですから、人口の多い重要な州をより多く制した方が有利になるのです。
また、もともと共和党が強い州、民主党が強い州があり、これらの州では選挙をする前から、ある程度、勝敗の予測がついています。それよりも注目されるのは、激戦が予想され、なおかつ選挙人が多い州です。フロリダ州(選挙人29人)、ペンシルベニア州(同20人)、オハイオ州(同18人)、ミシガン州(同16人)などがそれに当たり、こうした州でいかに勝利を勝ち取るかが、最終的な結果を大きく左右する重要なポイントになります。
選挙人の総数は538人。このうち過半数の270人を獲得した人が、第46代アメリカ大統領となります。
11月3日の一般投票の後、12月に各州の選挙人による投票が行われ、正式に新しい大統領が決定します。そして2021年1月20日に、次期大統領の就任式が執り行われることになっています。
選挙の争点は、主に次の3つです。
①新型コロナウイルス感染症対策
②経済と雇用の回復
③人種差別問題(抗議デモなど)への対応
アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大が続き、感染者数・死亡者数は共に世界最多となっています。大統領選では、このコロナ危機をいかにして乗り越え、経済活動を回復軌道に戻せるかが大きなカギとなりそうです。
8月の党大会は、リモートでの投票が実施されるなど規模を縮小して開催。本選挙では郵便投票を導入する動きが広がるなど、今回は異例ずくめの選挙戦となっています。さて、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか――?
2016年6月、日本の選挙権年齢が、これまでの20歳から18歳に引き下げられました。選挙権年齢の変更は1945年以来71年ぶりのこと。年齢が引き下げられた理由は2つあり、1つは日本の将来を担う若い世代の意見をもっと政治に反映させようというもの。もう1つは、世界的には18歳で選挙権を取得できる国が多いため、世界の標準に合わせた、ということです。
18歳以上の人が初めて国政選挙に参加したのは2016年に行われた参議院選挙で、18~19歳の投票率は46.78%でした。ところが、2019年の参議院選挙では31.33 %に急落。18歳選挙権のブームが早くも過ぎてしまったかと、多くの人々をがっかりさせました。
選挙とは、国民や住民の声を聞き、その意見を反映した政治を行ってくれる、わたしたちの代表を選ぶ大切なもの。皆さんが投じる1票が、自分の暮らしや将来を変える大きな力につながるのです。
日本の国会は、衆議院と参議院の2つの議会に分かれていることは知っていますよね? 両議院の議員(国会議員)は国民の選挙で選ばれ、内閣総理大臣(首相)は国会議員の投票によって指名されます。衆議院の“衆議”は多人数で評議・相談するという意味。参議院の“参議”は国の政治に関する議事に参与するという意味からきています。
それぞれの議員選挙は、どのようにして行われているのでしょうか?
●衆議院
衆議院議員の任期は4年。任期が満了した時か、解散(任期満了の前に内閣不信任決議案が可決されたり、天皇の国事行為として首相の判断で議員全員を辞めさせること)があった時に、議員全員を選び直すために行われるのが「総選挙」です。参議院よりも任期が短いため、より新しい民意(国民の意見)を政治に反映させることができます。そのため、衆議院は参議院に比べて、法案や予算などの可決に優越した立場を持っています。
●参議院
任期は6年で解散はありません。衆議院に比べて長期的な視野でじっくりと審議を進めることが多く、衆議院をチェックするといった役割があります。選挙では議席の半数を3年ごとに選び直します。2019年に行われた参議院選挙では、自民党と公明党の*2連立与党が野党に勝利しました。
選挙は有権者が政治に対して意志表明ができる機会です。候補者の考えや政党の政策をしっかり聞くようにしましょう。
*2政権を担当する政党が「与党」、それ以外の政党が「野党」。
国が違えば選挙のやり方も様々。世界の“選挙トリビア”を紹介しましょう。
【トリビア1】 投票率は90%以上! ―― オーストラリア
オーストラリアでは18歳以上の全ての国民に選挙権があり、「義務投票制度」が設けられています。選挙権を持つ人が正当な理由もなく投票しなかった場合は、罰則(罰金)が科せられます(20オーストラリアドル=1500円程度)。この制度が導入されたのは1924年で、以後、投票率が90%を下回ったことはないとか。
●日本の国政選挙の投票率はこの10年間、50~60%ほどで推移。2019年の参議院選挙では過去2番目の低さとなる48.8%でした。
【トリビア2】 国会議員が3000人もいる ―― 中国
中国の国会は、全国人民代表大会(全人代)がとり仕切る一院制。全人代の国会議員は、日本の市区町村に相当する地方自治体の選挙から始まり、何段階かの選挙を経て選ばれますが、その総数は約3000人! 世界第1位の多さです。世界約190か国の平均は240人程度ですから、いかに多いかがわかりますね。
●日本の国会議員の定数は713人(衆議院465人、参議院248人)。
【トリビア3】 16歳から投票できる ―― ブラジルなど
ブラジルでは、18~70歳までの読み書きができる全国民に投票が義務づけられていますが、希望すれば16歳から、また70歳を過ぎても投票できることになっています。ブラジルと同じ南米のキューバやエクアドルでは、16歳になった時点で選挙権が取得でき、ヨーロッパのオーストリアも16歳で選挙権が与えられます。
【トリビア4】 投票所に釘⁉ ―― インドネシア
インドネシアの選挙では、投票用紙に候補者の写真や政党のマークが印刷されていて、有権者は自分が投票したい人の写真や政党のマークに釘で穴を開ける、という方法が行われています。インドネシアは大小多くの島々から成り立っており、使われる言語も様々なので、公用語のインドネシア語が読めない人がたくさんいます。この方法なら、インドネシア語が読めなくても、候補者の顔や政党のマークさえ覚えていれば問題なく投票できるわけです。
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