2018年10月号 特集②
CASE1 大阪産業大学附属高等学校
校長・平岡伸一郎先生
特色ある5つのコース
今年度、学校創立90周年の大阪産業大学附属高等学校。5つのコースそれぞれの特色を活かし、私立校ならではの人材育成に注力しています。
平岡先生「国公立大学や難関私立大学を目指す『普通科特進コースⅠ』及び『普通科特進コースⅡ』では、通常の授業はもちろん早朝テストや特別講座などの時間を通して、着実に学力アップをはかっています。教員は生徒一人ひとりの習熟度をしっかりと把握しているので、きめ細かな指導が可能です。また、大阪産業大学を中心に進学を目指す『普通科進学コース』では、全科目バランスのとれたカリキュラムを展開しています。勉学やクラブ活動などを通して心身共に成長しながら進学を目指せるのは、附属高校の強みだと思います」
大阪産業大学との高大連携プログラムが充実しているのも、附属高校ならではと言っていいでしょう。まず、1年次では、附属高校の卒業生である大阪産業大学生との交流会が開催されます。続く2・3年次には、実際にキャンパスを訪問したり、大学で模擬講義を受けたり、大学からの出張講義を受講したりといった経験をします。
平岡先生「学業とスポーツの両立を目指す『普通科スポーツコース』の生徒たちは、幅広い体育実技を体験しながら身体能力を高めています。本校の運動会では、このスポーツコースの生徒たちによる竹の棒を使った棒体操が目玉の一つです。学年を超えた結束が生み出す、高い技術力は毎年大好評なんですよ」
運動会や文化祭「梧桐祭」などの学校行事は、生徒が主体となって運営を進めていきます。教職員は、運動会で対抗リレーに出場したり、「梧桐祭」でダンスを披露したりするそうです。準備などは生徒の自主性に任せ、当日は一緒になって盛り上がる先生たちとの絆も、学校行事からのぞき見ることができます。
グローバルコースの魅力
今回“プレゼンテーション力”指導に力を入れている例として紹介するのは、今年3年目を迎える『国際科グローバルコース』です。
平岡先生「グローバルコースで特に重視するのは、アクティブ・ラーニングです。語学教育に重点を置きながら、生徒の主体性やチャレンジ精神を育むことを目的としています。このコースでは、1年留学など充実した留学制度、外国人留学生との積極的な交流などが魅力です。留学を終えて帰国した生徒たちの成長ぶりは、担当教員も驚くほどです」
今回は、そんなグローバルコースで、留学を終えたばかりの3年生による対談をお送りします!
CASE1インタビュー 世界につながる英語力とプレゼン力
大阪産業大学附属高等学校の「国際化グローバルコース」で、アメリカ・オレゴン州に3か月留学した福原さん、そして1年間留学していた有川さんと羅さんにお話を伺いました!
―― なぜグローバルコースを受験したのですか?
福原さん「中学の時は、英語が得意ではなかったものの、とにかく好きでした。高校で好きな英語をもっと学びたいと思い、塾の先生の勧めもあって、ここの高校を志望しました。留学制度が充実しているので、そこが魅力でした!」
羅さん「両親が中国出身で、ぼくも少しだけ中国語を話せます。海外にも何度か行ったことがあり、英語を自在に操れたらなと思っていました。中国語、英語、日本語のトリリンガルを目指したいと思ったんです。グローバルコースでは、1年間の長期留学中に向こうで取得した授業を、ちゃんと成績としてカウントしてくれます。そこがいいなと思いました」
有川さん「ぼくは小学5年生の時に、塾で英語を習い始めました。中学生になって、英語を教えてくれた恩師が、高校での留学を勧めてくれたんです。それで、ここのグローバルコースがいいなって」
―― グローバルコースに進んでよかったなと思うところは?
有川さん「先生方の英語の発音が、とてもいいんです。おかげで耳が鍛えられました。留学から帰ってからは、ますます英語が聞き取れるようになって、本当によかったと思っています」
羅さん「ぼくもそう。留学を経験したらリスニング力が格段にアップしました。ここまで成長できたのも、グローバルコースで学んだ下地があったからだと思います」
福原さん「わたしは、もともと人前で話すのが苦手でした。どうしても緊張してしまうんです。グローバルコースの授業『EnglishPresentation』では、英語を使ったプレゼンテーションを学びます。そこで、ネイティブ・スピーカーの先生と一緒に練習をしていくうちに、プレゼンにも慣れてきました。外国人留学生との交流プログラムでもプレゼンをするんですよ」
羅さん「プレゼンの経験を通して、いかに聞き手に興味を持ってもらうかについて考えるようになりました。授業では、小声にならないように、無駄に長話にならないように、といったことに気を付けると効果的だと学びました。英語の発音に自信がなくても、はっきりと口にすること、相手に伝えようとする意思が大切なんですよね」
有川さん「ぼくはプレゼン好きですよ! 英語で思いを述べることが楽しいです。グローバルコースの授業を通して、聞き手の目を見て話したり、ジェスチャーを加えて表現したりといった力も身につけることができました。英語力だけじゃなくて、伝える力が総合的にアップしたと思います」
福原さん「話している時に目が合うと、ちゃんと聞いてくれているんだな、伝わっているんだなって嬉しくなります」
羅さん「アメリカの学校では、授業中、生徒の意見が活発に飛び交います。先生もどんどん生徒に話しかけ、生徒も先生にたくさん質問します。グローバルコースでプレゼン力を身につけていたおかげで、こうした雰囲気にも何とかついていけました」
英語担当・合田早加江先生
―― グローバルコースで培った力を活かして、将来はどんな道に進みたいですか?
有川さん「英語を完璧に身につけて、それが活かせる道に進みたいと考えています。それと、ぼくも羅くんと同じで、祖母が中国出身なので中国語を学べる環境があります。英語を身につけたら、次は中国語にチャレンジしたいですね!」
羅さん「ぼくは、大学で国際経済学を学んでみたいです。日本と中国、アメリカの関係が今よりもっと良くなるように、架け橋になれたらいいなと思っています」
福原さん「自分ではあまり実感がないのですが、帰国して周りから発音がよくなったねって言われます。3か月でもだいぶ変わるんだなって。嬉しいです。将来は、身につけた英語力を活かして、貿易系の仕事に就きたいと思っています。3年生は第2外国語の授業も選択するのですが、わたしはスペイン語に挑戦中です。すごく楽しいですよ!」
―― 合田先生、3人の成長ぶりを見ていかがですか?
合田先生「頼もしい限りですね! 自信に溢れている様子がよくわかります。この3人に限らず、留学を経験した生徒たちは、全員が飛躍的に成長します。英語力アップだけでなく、異文化理解を深めることができ、良い経験になっているのだと思います。
グローバルコースの生徒たちは、何より英語が大好きです。英語好きの仲間が集まって、楽しく学んでいるのが本コースの環境だと思います。私たち教員は、そんな彼らをしっかりサポートしていきます。留学制度はもちろん、資格検定のための最新の学習システムなども整えていますので、存分に活用してもらいたいですね」
CASE2 東京都市大学付属中学校・高等学校
校長・長野雅弘先生
6年一貫の学習システム
1951年の創立以来、国際社会の中で創造力と行動力に富んだ青年を育ててきた東京都市大学付属中学校・高等学校。そんな同校では、6年一貫の充実した学習システム、きめ細かな指導などを強みとしています。
長野先生「『トシコー』では、生徒が主体的に学び、知的好奇心を存分に育める環境を整えています。生徒自らが1週間の予定を記入し、時間を管理する『TMシート(タイムマネージメントシート)』も、そんな本校の特色をよく表している取り組みの一つでしょう。また、教員たちも生徒に干渉するのではなく、見守りながら共に進んでいく“師近距離”の関係を心がけています。職員室に隣接する学習スペース『スタディラウンジ』は、放課後になるとしぜんと賑わいます。自主的に教員に質問するなど、毎日のように主体的・意欲的に学ぶ生徒の姿が見られます。
グローバルカリキュラムにも力を入れています。本校は、ネイティブスピーカーの教員と一緒に、たっぷりと時間をかけて“生きた英語”を学べる環境があります。さらに、英語を使って大勢の前でプレゼンする力、一対一で話をする力なども磨きます。これらはグローバル社会で活躍するために大変役に立つ学びです」
進路指導についても、私立校ならではのサポートが充実しています。
長野先生「本校では、コース制により、生徒それぞれの目標や習熟度に合わせてクラス編成を行います。難関国公立および私立大学を第一志望とする生徒が多く、目標の達成と支援のための進路行事も徹底しています。 例えば、7月に高校1・2年生を対象として模擬授業が行われます。実際に大学教授の方々を招いた授業で、各専門分野の最新の研究に触れることができるので、生徒たちは大学での学びを肌で感じることができます。志望大学ごとに、教員やその大学に進学した本校の先輩たちによる、入試問題の分析や学習方法についてのアドバイスが聞ける『難関大ガイダンス』もあります。生徒たちは熱心に耳を傾けていますよ」
他にも、東大・東工大・一橋大のキャンパスをめぐるツアーなど、体験できる進路行事が盛りだくさんです。6年間をかけて、しっかりと目標を実現させていく環境が整っています。
文化祭「柏苑祭」で大いに賑わう校舎の中庭。
生徒が主導する弁論大会
東京都市大学付属中学校・高等学校では、説得力のあるプレゼン力を磨くことにも力を入れています。中学1・2年生全員が冬休みの宿題として取り組むのは、弁論大会の原稿作りです。
長野先生「2月の弁論大会に向け、各クラスから委員が選出され、実行委員会が組織されます。生徒たちの手によって企画・運営・司会などが行われる、自主性を尊重する行事です。大会本番の代表は各クラス1名ずつです。1月のクラス別弁論大会を経て絞り込まれます。弁論テーマはいくつかのカテゴリーに沿って執筆しますが、毎年大変興味深い視点・考察に驚かされます」
大会では、聞き手の生徒全員が審査員。内容に加えて、姿勢や発声も評価し、最優秀者には校長杯が贈られます。
クエストカップへの挑戦
プレゼン力を磨くため、高校1年の生徒たちが挑戦するのが「クエストカップ」です。これは、実在の企業から出されるミッションにチームで挑むプログラムで、全国の学校からエントリーがある大きなイベントです。東京都市大学付属中学校・高等学校では、高校1年の情報の授業で企業のミッションに取り組み、本番に挑んでいます。
長野先生「『クエストカップ』本番までに約18時間の授業を予定しています。授業では、インターン対象の企業について徹底的に調査し、本番に向けて課題に取り組んでいきます。この時、教員はファシリテーター(促進者)として参加。生徒に直接答えを教えるのではなく、適度な距離を保ちながらサポートに徹します」
生徒たちは、授業を通して「なぜ?」や「どうして?」を追究することで、アイディアに磨きをかけ、誰が聞いても納得できる論理的な説明ができるようになります。
長野先生「今年度は、合計73チームがクエストエデュケーションプログラム(企業探究プログラム)に挑戦します。情報の授業では、教員は“答えが1つではない”問いを提示します。こうした問題について、生徒たちは自ら考え、行動します。そうして育まれた自主性、論理的な思考力、コミュニケーション力は、生徒が将来どのような道に進んだとしても、必ず役に立つことでしょう」
弁論大会の様子。目線や身振りなど、コミュニケーション力を駆使して、聞き手に伝えます。
2014年には、「企業プレゼンテーション」部門で「日本コカ・コーラ賞」を 受賞したこともあります!