2019年10月号 特集①
身体を動かすことの楽しさや喜びを知ってもらいたい
「ゆりかごから墓場まで」、全ての年代でスポーツに親しんでもらいたい。武庫川女子大学がそんな拠点になれたらいいなと考え、市内の小中学生を大学に集め、ジュニア体操クラブを指導して37年になります。当時は、時期が早すぎたのか全ての年代を対象としたクラブの設立にはいたりませんでした。
2011年、ついに大学に「健康・スポーツ科学部」が設置され、大学が地域スポーツ振興の中心になるという気運が高まりました。そうして大学が主体的にアクションを起こすことで2014年、「スポーツクラブ武庫女」の設立となりました。これまで育んできた夢やアイデアを具体的な形に表した「健康とスポーツのプログラム」を地域の皆さんに提供する場所です。 大学の持つ知識や人材を活かし、子どもから大人まで気軽に楽しく参加いただけるプログラムづくりに努めました。体操や柔道、ピラティスなど、今年度は26のプログラムに、3歳から高齢の方まで240人に登録いただいています。
「好きこそものの上手なれ」です。まず、身体を動かすことの楽しさや喜びを知ってもらい、スポーツ大好きオタクを作りたいと思っています。そして、運動することを通して、自身に対する可能性を感じながら、生きる力を身につけてもらいたいですね。
スポーツは仲間との交流を通じ、他者に対する礼儀や思いやり、感謝する心を学べる場です。挑戦する心を持ち、達成感を味わいながら、いろいろなものに感動できる心を持った人になってほしいと思います。
武庫川女子 大学健康・スポーツ科学部 教授
三井正也先生
スポーツ大好きオタクを目指せ!
「おはようございます」「よろしくお願いします」体育館に大きな声が響きわたります。ここは、体操競技の2020年東京オリンピック候補も練習している本格的な設備が整う、武庫川女子大学の第二体育館。
今日は小学生の男女が週1回通う、体操教室にお邪魔しました。30人の選手が我先にとコーチの前へ飛び出していきます。全体で準備体操を行ったあと、コーチの合図とともに、床、跳び箱、鉄棒、平均台へと分かれます。1種目は15分。子どもの集中力に合わせて、水分補給をしながら、テンポよくローテーションしていきます。
あるチームは、トランポリン→跳び箱→平均台を10人が途切れることなくリズミカルにかけぬけていきます。「わぁぁ〜」とバランスを取りながらトランポリンを終えたかと思うと、体勢を整えダッシュ。思い切り踏み切り板を踏み込み、軽々と跳び箱を越えていきます。着地が決まり少し自慢げな笑顔も見えます。しかし、次の瞬間には顔は一気に真剣モード。細い平均台を慎重に両脚ジャンプで進みます。「ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ」コーチのかけ声に合わせ着地。ホッとするまもなく、トランポリンに向かいます。
「次!」「はい!」床では、前転、後転、伸膝後転、後転倒立とどんどん難しくなっていきます。額からは大粒の汗も流れてきます。でも、誰も動きを止めません。バク転(後方倒立回転跳び)に挑戦しているグループもあります。補助具を使っての練習ですが、なかなかうまく回れません。……今回もダメでした。ですが、彼女の頭の中では、どんどん成功の姿が描かれています。
「技ができたときは、最高にうれしいです。次の難しい技にも挑戦したいと思うし、たぶん次もできると思います」選手たちは笑顔で声をそろえます。うまくできた時の喜びを心と体が知っているから、選手たちはさらなる挑戦を続けます。
不安定なトランポリン、高くそびえる跳び箱、狭く高さのある平均台。
瞬時に頭を切り替え、動作を体に伝えるトレーニング。